喜右衛門園芸

植物栽培、観察、雑学、情報発信

Conophytum garden hybrid No.15

園芸コノフィツム覚書き・No.15

サマーレッドの正体

園芸コノフィツムに興味を持ってからまぁまぁの時間が経ったが、探れば探る程現代の園芸世界は何事にもいい加減や良い加減が入り乱れ、結果遊びの事だからと真剣さは必要なく適当な世界に成り下がってしまったのだと痛感する。

 

先日ご縁があって学識者とお会いする機会があり、その中で興味深い話を伺った。

それを簡単に言うと、物に興味がある人間には2タイプに大別される。

それが何であろうと何と判らくとも全く無関心で興味がなく、関心があるのは表面上の事のみ、確かにそこにある事実のみに興味がある人間と、確かにそこにある事実とそれが何であるのか何なのか確かめようとする人間だ。

勿論こんなブログを時折書いているのだから当然私は後者の人間で、判らないことには出来る限りの手段を使って知りたいのである。

話を前に戻すと、遊びであったとしても後者ばかりであったなら園芸の世界は今とは全く違っていたに違いないのは明らかです。

 

またいつもの様にお題とは関係ない、ディスリの前置きが長くなりました。

さてお題の通り、サマーレッドと言う園芸交配品があります。

私がその名を知ったのは随分前の事だが、文字通り夏咲きの赤花なんだろうと思いながら栽培をはじめたのは、10年余前の事です。

確かに夏に開花するのだか、6月下旬頃〜9月いっぱいまでと開花の時期は年によって変化がある。

その変化は何によるのだろう。

国内では高温季にあたる為、水やりを控えたり断水させるなど色々な方法でやり過ごす時期にあたるが、それには関係なく花芽は出てくる。 

しかしどういう訳か分け苗を多数作って同条件で管理していても、開花にはバラツキが出る。

成長に差が無く見た目でも同じ物同士で、一方は開花して一方は随分と後になって開花したりする。

夏咲き品にはどうもその様な傾向があり、この他園芸品では “ 聖火 ” や    “ 黄金の波 ” でも観察している。

特にこのサマーレッドでは毎年観察しているが、6〜9月までの間で30日程と幅の広い花期がある。 

この6〜9月と言うのはその年の天候や成長度合いによると思われたが、秋寄りまたは晩秋の花期を持つ多くの物には無い(狂い咲きは除く)特徴で、夏咲き品には多かれ少なかれあります。

同じ夏咲きの原種フルテスケンスの遺伝的関与が色濃く出た結果でしょう。

因みに花期は長く無いが早咲きで、原種フルテスケンスの影響が色濃くあると思われるその他の品種に、     絵姿、くす玉 がある。

 

これらの事を念頭において別な名のクローンを見てみたい。

老舗多肉植物生産販売店であった錦園より、スポットライトと名された交配品が出ている。

当時の説明には寂光系改良種、花期20日以上。とある。

(寂光=原種フルテスケンスの元個体名で、現在原種フルテスケンスを示す流通名)

まれに生理によっては二花になる場合を除き一茎一花である為、20日以上と言う意味はどう言うことか解らなかった。

その後にオリジナルクローンを栽培して意味がやっと解った。

葉数が増してきたら分け苗を作っておくのですが、花がチラホラチラホラと咲き揃う事は無く、元苗の葉数がある物もそうであった。

確かにチラホラと咲くのであれば、花期は長い訳です。

大抵の場合花付きの良い、悪い品種であっても花期はある程度纏まっている。

花付きの悪い品種でも幾つかの花芽は着くもので、咲き揃うと言う意味では揃っている。

だから花期を過ぎた物が未だ咲いていると言う印象は持たないものだ。

その点スポットライト、サマーレッドは花期が長い印象を持つ。

 

結論を言えば、両名前で呼ばれるクローンは同一のクローンだったのである。

長らく精査した結果、同じものでむしろ違いが判らない。

サマーレッドはスポットライトだったんです。

私には最初からこのサマーレッドと言う名前は突然目の前に現れた名前で、何か違和感があった。

またこの品種にも良く似たものがあって、

先の記事に書いた “ 聖火 ” がそれです。

開花すると花色に違いが見られるが、それでもよく見ないと判らないと思う。

葉姿が若干異なっているだけなので、花が無ければ見分けるのは難しい。

ざっと言えば  “ 聖火 ” は太く若干厚肉気味で、

“ スポットライト ” は、すぅ~として腰高。

その違いも栽培の仕方によってかなり縮まる。

実際に 聖火 を サマーレッド として販売されているのも、その逆も確認しています。

 

この様に実は同一クローンが2つ、3つの名で呼ばれ流通する物はかなり以前からあり、現在判る範囲でも幾つもある。

それに輪をかけて何回かこのブログ内の記事でも書いた様に、個体名である品種の名前の中には単一のクローンしか無いはずが、オリジナルによく似た複数のクローンが含まれていたりする。

こうなると膨大な流通する園芸品の中でオリジナル(出来た当初から似た物が無く名前と個体が合致している)を探すのは、大変難しい。

 

話を戻し、何故同一クローンに2つも3つも名前があるのか、来歴を探ります。

かつて色々な品種を競いながら作出し世に出してきた業者が集まっていた場所は、関東、甲信地方であったことは周知の事実です。

むしろ圧倒的でありました。

東海や関西地方でも触発された事もあったが、作出される個性的な品種(当時は)が、どんどん発表され販売された事で敵わないと思ったに違いない。

コレクションしたい人口は大きく膨らみ、それを賄うため東海や関西の業者が関東、信州に押し寄せた為、供給元もそれに対応した。

対応のし方にも問題があって、分け苗だけでは趣味家の欲求に応えられない事から、原種なら実生苗を作り園芸品は似た物を含めたり、葉姿のみでは初見な趣味家には見分けがつかない事を良い事に、品違いであろうと販売した。

(作出元で当初この様な事は少なかったとは思うが、業者間で互いの品種を得て管理していると品違いは多くなる傾向があり、作出元では無い業者のもとでは尚更多々あった)

ざっとこんな流れですが、じゃあ何故元々付いた名前を別な名前にして誰か流通させたのか?

これは人間の欲、名誉が関係しています。

既に作出されて名前があるにもかかわらず、名前を変え私が作ったものと偽り紹介して販売すれば、名誉的な満足感があるし高値で売れますからお金も入る訳です。

それまでは既存でも未だ未見の品種、新しい品種を関東、信州へ求めたが、名前を変え遠く関西地方で販売すれば趣味家はそちらにも目を向けざるを得ない。

今もそうだが、写真や画像も無く名前のみで販売するのだから聞いた事の無い名前を聞けば、趣味家は入手したくなったであろう。

そして名前のみが独り歩きする、独特な世界になってしまったのです。

 

名前で検索をかけると、名前、葉姿、花様の画像が様々出てきますが、その中には名前と花様の画像が一致せず品違いな物が多々あります。

園芸品専門のサイトでもそうですし、海外でも明らかな園芸品を原種フルテスケンスとして紹介しています。

画像は拡散しますから出来る限り調べアップしてほしいし、調べがつかなければ種名や品種名、個体名を断定して使うべきではない。

断定して使うという事はそれなりの根拠が必要で、それでも違ってる様な場合は再度検討や改める目を持ってもらいたいと、私は切望する。

 

今回は画像が一枚もないが、準備が出来なかったので文字のみとなってしまった。

時間があって思い立ったら加えてみたいが、何時になるやら。

ただ一刻も早く事実を公表したかった、只々その一点のみである。