Crassula columnaris 、国内でも古くから知られた種で麗人と言う高貴な流通名を持つ物です。
10数年前も基本種が稀に販売される程度の貴重品で、塊根性クラッスラを除いて1、2位を争う高級品でしょう。
私はこのコルムナリスは大好きで、販売されているのを見かけては時折購入し楽しんでいて、過去に10個体近くは栽培観察しました。
最近見かけなくなってしまい残念です。
現在は数年前より僅かにこの名前の種子を入手する事ができる為、実生個体を栽培しています。
しかし昔苗で見かけたコルムナリスとこの実生個体は、成長するにつれ何かが違うと言う違和感が生まれ、この種類がどの様な物なのかぼんやりですが判って来つつあります。
ここで判っている事実を書いておこうかと思います。
この種は基本種コルムナリスと亜種プロリフェラがあり、自生地の南部に基本種が、北部に亜種が分布するとあるがどうもそう単純ではない様です。
Crassula columnaris ssp. columnaris
ssp. prolifera
栽培に関しても、難易度が高いや開花までは時間を要するとか、詳しく書かれた物を見る機会は極端に少ない。
これを踏まえてクラッスラ・コルムナリスとはどの様な植物なのかを少し詳しく見てみようと思う。
基本種コルムナリス
当時の栽培画像を探したが見つからないのが残念だが、唯一見つかったのがこの画像で開花時の画像は引き続き探してみようと思う。
茎は生涯一本の単茎で開花後に枯死する一稔性多年草です。
開花までには長い時間を要するが、自生は無論だが栽培下でも発芽からの成長が緩慢な為で、栽培は特に難しいところはない様に思われます。
しかし輸入カット苗や抜き苗で購入した場合、その成長段階が開花サイズに達している苗は、入手した時期にもよるが大抵その年の開花シーズン、若しくは翌年の開花シーズンに開花し枯死してしまいます。
要因はハッキリしてはいませんが、花芽形成の生理に水分が起因すると思われ、自生下栽培下ともその時期の摂取量が花芽形成のトリガーになっているのではないかと思っています。
実際文献では頻繁または辛めの水やりをしてはいけないと書かれていて、脱水状態と言うか絶食をキープするとありました。
となるとカット苗や抜き苗では少なくとも発根や活着する必要がある為、水やりは不可欠で長く維持するのは難しくなります。
唯一脱水状態をキープしながらじっくり栽培する為には、実生するしかないし実生床から移植をするなら直径数ミリから10mmの初期でないと無理と言う事になろう。
言い換えれば幼苗以外の移植は短命、即ち開花して枯死するのが早いので不可と言う事になると思います。
逆手に取れば複数個体を同時に開花させたい場合には、同じステージの成苗を同じく水やりすれば理論上同時に開花するはずです。
入手方法がどうしても抜き苗になってしまう場合が多いですが、栽培するのでは無く管理し種子を得る為だけに入手すると思ってください。
す
種子を得る為のヒントでは無いでしょうか。
このような事もあって、栽培が難しいと誤って認識された要因になった可能性があります。
けっして弱い物でも無いが加湿はやはり禁物で、特に初夏から初秋の休眠にあたる高温期の水やりはあっと言う間に溶けてしまう事がある。
私は過去に雨がかかり溶けた事がありますので、注意が必要です。
国内栽培下での花期は、基本種コルムナリスで夏の終わりから秋初めより花芽形成で、秋半ばには開花しています。
因みに後述する亜種プロリフェラはそれよりも遅いです。
この事を現地に当てはめると、基本種は春咲きで亜種は夏咲きと花期が違うと言う事になります。
これは両者のハッキリした違いの一つです。
花色は花弁内側外側共に乳白色〜極薄い白黄色で、時に外側に着色があるが極薄い。
花数は大変多くボール状、日照も多少影響するが開花時に植物体茎は殆どまたは僅かしか伸びない。
余談だが昔に僅かながら流通していた、基本種コルムナリスは実生苗だったのか?それとも、、。
どこで聞いたか忘れましたが、胴切りで増やすと聞いた事がありました。
画像の個体で30mmあまりだが、大きい物では幅、高さとも50mm近い大きさで開花する。
画像でも一つは花芽が出来ているが、もう一つは未だ開花には至っていない。
高さは20mm程であったと思うが、葉と葉の間つまり節間は全く見えずぎっしりと葉が重なっている物を胴切りなどできる物でしょうか。
仮に胴切りをやろうとする場合には、あえて光量を溶けない程度調節して、節間を伸ばし茎が僅かに見える状態にしないと無理ですね。
その位葉と葉は密着しています。
それがカッコいい植物なんですがね。
真意の程は未だに私は知らない。
亜種プロリフェラ
複数の茎を持って群生し一稔性多年草である事は基本種と同じだが、開花した茎は枯死するがその他の未開花の芽が複数あるため同一個体は枯死せずに残り増殖する。
これはクラッスラ属に一般的な事です。
基本種と同じくカットや抜き苗をした場合に開花を促進する傾向にあるが、開花のまでのスピードよりも脇芽をだして増殖する方が早いので、開花によって枯死する事はあまりない様に思います。
また実生から開花までに要する時間は、栽培下ではおおよそ3年程でそれをを過ぎた秋中盤から花芽形成が始まる。
その後栽培環境によるが、無加温で翌年の2月下旬頃より開花が始まります。
画像は実生によるもので、亜種プロリフェラの典型的なタイプで未だ芽分けやカットをした事はないので、もう暫くしたらやってみたいと思います。
花色は薄い黄色やクリーム色〜山吹色または赤味のある黄色〜濃い朱色まで変化に富むが、花弁の内側は外側に比べ薄くクリーム色から橙色、外側がそれより濃い。
だから開花前では外側が目立つ為、基本種よりも有色で濃い印象です。
開花時期には茎の伸長があり基本種とは随分と印象が異なっている。
花数は基本種より随分と少なく一つ一つは小さく、ロート状または半球状に着き稀にボール状。
その他にも基本種と亜種では葉の形状をはじめ花の各部の形状やサイズ等違いはあるが、近年の多肉ブームで各地の自生画像や栽培画像が見られる事により、コルムナリスと言う植物には3つのタイプがある事が判った。
亜種プロリフェラの典型タイプですが、基本種コルムナリスで種子を入手したった1本が発芽して育った物です。
5mm程に成長した頃に、亜種プロリフェラだと確信した為札は基本種コルムナリスになったままですが、そこからまる2年で開花に至ってます。
次に同じく基本種コルムナリスとして入手した種子による実生達ですが、上記の典型タイプ亜種プロリフェラと同時期の実生で、入手元は異なっていますが丸3年で開花に至っています。
この種子を提供している方は以前より海外より種子を入手し、自ら栽培観察、大変詳しく考察されていて感銘を受けますが、種子を提供する以上自分の目で確かめた事や事実を購入者に種子と共に提供している方で信用に値します。
輸入による物なのは判っていて、ドイツでの販売があるのを見かけました。
その先が不明ですが、安定して供給出来ている様なのでガーデンシードでは無いかと思われます。
と言うと亜種は栽培下で比較的維持出来ると言う事になります。
この種子を譲って頂いた方はもう随分前に開花させていますから、種子を得ている可能性がありますから機会があればそのあたりも聞いてみたいと思います。
その方も考察していますが、それと並行して違う視点で事実を元に仮説と考察をしてみたいと思います。
観察と仮説
昔国内でも僅かながら流通していたコルムナリスは紛れもなく典型的基本種であったが、それは長らくこのタイプしか種子や苗が流通してこなかったと思われます。
国外は判りませんが、国内の園芸本や雑誌等で亜種の存在が登場するのは、ここ20年位の事ではないでしょうか。
南アフリカのクラッスラ属の文献に写真が掲載されているのが、2000年代前半なんで、間違っていたらすみません。
流通したと言っても極僅かかで、性質上コンスタントな流通をしづらい植物(他家受粉性で種子を得るのは複数個体で同じく開花させる必要があるから)で、国内(外?)の基本種は絶えたと思われますが、、、、。
その代わり現在国内外で流通している物は、亜種のプロリフェラと思われる物が流通している。
これは亜種の性質上の事で先にも書いた通りで、栽培下で種子を得られ個体数を増やす事が出来るからです。
しかし上記の亜種プロリフェラの実生品の画像を見ても判る様に、典型的な物と違う個体があるのがお判りだろうか。
これです、
両者は同じ購入種子から出た物だが、形態に随分と差がある。
この要因は先の方も考察されている通り、出現の確率から供給元での種子混入であろうと私も思います。
典型的な亜種プロリフェラは極僅かで、圧倒的にそれとは違うタイプが成長する。
コルムナリスとして種子がリリースされたのだから当然だが、海外の出元も典型的亜種とは何か違うのは理解していて種類としてのコルムナリスと言う事にし、種子を販売したものと私は考えます。
茎の下部に1、2芽の花芽を持たない芽が出ているが、このタイプの物は典型的亜種プロリフェラの様に脇芽を持っていない事の方が多い。
またこんな風に茎の下部または上部の葉腋から側枝を出す事がよくあり、それらの枝は全て花芽になり開花する。
これらの事から推察するに
①典型的基本種、単茎、花期に茎は少ししか伸びない、葉腋からも側枝を全く出さない。
花は白に近いクリームで亜種と比べて大き花数は多い、一稔性多年草の物で花期は春咲き(国内では秋)
②典型的亜種、複数茎で群生、花期に茎が伸び 上がり葉腋から側枝を僅かに出し花茎となる。 花は黄色〜赤黄色で花数少なく基本種より小さい。
実生から開花までの間に多数の芽をマット状に形成し、開花した茎は枯れるが同一株は存続しその後も生き続ける、多年草で花期は秋(国内では初冬から初春)
②ー1 基本種と亜種を繋ぐ様な中間的な物、単茎または複数茎となるも亜種の様に群生することは無く、精々1〜3芽程度。
主軸は立ち上がり葉腋から側枝を出す物、出さない物とあるが出す物の方が多く、やがて花茎となり花が咲く。
花は黄色〜赤黄色で基本種より小さく花数は典型的亜種より多い。
開花した茎は枯死するが、茎元に別な芽が少数ある物はその後も生き続けると思うが、無い物は基本種同様に寿命を迎える。
思うがとしたのは未だ経験した事がない為で、今後どの様になるのか観察したいと思います。
こちらも亜種プロリフェラ同様の花期です。
こうしてみると①基本種の形質を持った物の真逆にあるのが②亜種で、その中間の様な個体群②ー1がある事が、沢山の自生画像から判ります。
恐らく自生地も住み分けていて現在栽培されてるのが②と②ー1の物と思われます。
産地の棲み分けは当然ですが典型的な基本種や亜種以外の形質(②ー1)を持つ様々な個体は、分類的にどの様な位置付けなんでしょうか?
どちらかと言えば基本種コルムナリスに含めるのは間違いで、性質は亜種に近い。
但し亜種プロリフェラでは無いと思いますので、別亜種の記載が必要では無いかと私は思います。
亜種プロリフェラとの違いは極僅かではあるが、タイプとして片付けられない差異があると私は考えます。
基本種は南部に亜種は北方種と文献には書かれていますが、果たしてそうでしょうか?
確かにそうだとしても、両者とは違う性質、形質を物個体群があるので、各々は元は同じでも独自の進化をしているのでしょう。
南北に連続した変異、いわゆるタイプである可能性も捨てきれない。
実際栽培をしてみた経験と考察を重ねた結果、亜種プロリフェラ、基本種コルムナリスとは別な亜種では無いのか?と言う仮説に行きつきます。
私が知らないだけで、ドイツあたりから論文がでているかもしれないが、今後更なる研究ぐ進むことを期待します。
2024・2・25
暖かい日がありましたので、花が咲き出してしまいました。
また寒くなったので先進みは一旦止まっていますが、見てみましょう。
やはり花を見ても基本種コルムナリスでは無く亜種プロリフェラの花ですが、典型的亜種プロリフェラの姿では無いので困ってしまいますね。
最初が典型的ではないものと次が典型的亜種プロリフェラの花です。
全く差異はないですが、個体の大きさに比例して花数は少ないです。
何だか主軸が倒れてしまい曲がったままで開花していますが、陽当たりが少し悪かったのでは無いかと思っています。
この先も経過観察をしてみます。
2024・3・16
寒い日が続いていますが、それなりに開花が進みご覧の通りになりました。
亜種プロリフェラで主軸の先にしか花芽は無いので、全ての花が咲いた状態です。
やはり花数は数えられる数で半球状です。
一方今の所亜種プロリフェラ?なのかなぁって言うタイプの物達も開花が進みましたが、明らかに花数は多くボール状です。
また何と言っても主軸の頂頭に出来る物とは別に、小型の花序が葉腋に出来るのが特徴的です。
この葉腋に出来る花序は頂頭の直ぐ下に出来る事もあれば根元の方に出来る場合もり、個体で違いがありますが生理的な事だと思います。
そもそも栽培下では自生地の様な過酷な全天では無い為、主軸は伸びる傾向があり画像の様に中頃に出来ている様に見えてしまいますが、本来はもっと主軸は詰まっていますから様子は少し違います。
しかし現地画像でも明らかに主軸の伸長はありますから、栽培下だからと言う訳ではない。
最終的には基本種コルムナリスも主軸の伸長はあるが、種子も熟して来て葉も枯れ込んでいよいよ最期の段階になって来た時の事で、亜種を含めたこれらの個体群の様に開花前から主軸の伸長があるのとは明らかに違う。
じゃぁ、この個体群が亜種プロリフェラなのかと言えば私は違うと思っていて、他に特徴として葉の形状や群生はせず時折根元付近に脇芽を形成したりしなかったりと不安定な事、植物体は亜種の2倍以上と大柄な事でも違いが明らかです。
また分布もとても気になるところで、基本種が南部に亜種が北部にと言うのは文献で確認しているので間違いは無いと思いますが、このタイプの個体群はどの様な分布をしているのか大変興味があります。
南部北部と言う単純な話では無いと思いますので、コルムナリスと言う特異な植物全体を理解する上でとても重要な事でしょう。
夜間になると特に強い芳香を放つので蛾の一種が複数来て活発に食事をしていました。
あまりよく撮れませんでしたが、花から花へ細い口を入れていました。
基本種コルムナリスの香りは若干青臭い感じで、私は良い香りとまでは思わなかったですが、こちらの個体達と亜種プロリフェラは良い柑橘系の香りがしています。
朝になり一匹休んでいたので、ここにしばらく滞在する様です。
当初ガーデンシードと思われましたので基本種と亜種との交雑を疑ったのですが、明らかな自生地の画像が多数見られるのと、基本種とは花期が全く異なっているのでその考えは捨てました。
しかしこのタイプの個体群と亜種プロリフェラの花期は栽培環境では被っている為、自生地でも差があまり無いと想像します。
この様な事がこのタイプが知られながら、亜種プロリフェラの様だとして片づけられている理由かも知れませんね。
花期が同じと言う事は栽培下では容易に交雑すると思われますが、自生地において互いに何らかの(地理的またはそれ以外の)距離があると思われ、この様なタイプが存在するのは事実です。
2024・3・24
まだまだ寒い日が続いて天気も雪や雨、晴れたら強風と穏やかさとはいきません。
それでも植物達は確実に動きを見せてくれて、楽しみな時期です。
家での唯一の亜種プロリフェラですが、花の盛りを過ぎたので子房の様子を確認する為に花弁を取り去りました。
4数性の花の為全てに4と言う数があり、子房も4つから成るのが判ると思います。
その子房は見事に膨らんで受粉したのが確認できますが、これは純粋なプロリフェラで受粉したのではなく、上記の同時に開花した別なタイプと交雑したものと思います。