デンジソウは元々南方系の植物で水生のシダ植物で、全国で絶滅危惧指定、または絶滅種になっている。
そのデンジソウの存在が古くから知られている場所で埼玉県内唯一の宝泉寺池自生地が、今シーズンをもって消滅する。
平成に入り再度発見されて以降様々な方達の手で保存されて来た場所は私有地で、宅地開発され最後の低地が埋め立てられる為だ。
しかもこれまで残っていた場所以外の元耕地や低地、池の水面は県道建設の為に少しずつ土地が埋め立てられ、池周辺環境は大きく変貌した。
埼玉県久喜市鷲宮町八浦上の宝泉寺池は、30年弱前何回か通りかかった頃池一帯はヨシが覆っていて、水面が見える池があり大部分は浅く広い水湿地のだったのを記憶している。
周囲の低地は耕地として利用されていて、田圃になっていた所もあった。
実際は水深のある水面の外側の広い範囲を浅い水湿地でヨシが覆い、更にその外側が湿地となっていて地形からかなり広い低地だったと推察される。
直ぐ脇を交通量の多い県道が走っていて、池は釣りを楽しむ釣り場で隣接する様に遊戯場がある。
その県道から落下したのかヨシの水湿地に白い乗用車、確かセダンが長らくあったのが印象的だった。
現在その場所は遊戯場の拡張した駐車場として埋め立てられているが、この駐車場や残った池の水面をかすめる形で新たな県道建設の計画(桜の土手で有名な幸手権現堂桜堤と東北道加須I.C.を結ぶ道路)が以前から進行していたのも事実で、この宝泉寺池周辺の土地をめぐる様々な思惑が垣間見える。
中央のわだちがパワーショベルが走った辺りが最後に残った自生地跡で、奥に遊戯場と左脇は近年宅地開発され埋め立てられたのと、右がそれ以前に田圃だった場所が2m弱高埋め立てられたのが見える。
最後の低地が埋め立てられ自生地消滅どなるが、これまでも残っている場所以外の元耕地や低地は、少しずつ埋め立てられながら自生環境は小さくなっていった。
とくにコロナ需要でここ3年で宅地開発は急増した為、この辺りも影響を受けた形で私有地と言うこともあり売却され開発となった。
余談ですが、
家を買う側としては、土地の来歴を見ればこの様な土地を買うべきでは無いと断言できますが、世の中の方々の中には有事のリスクを知っても購入する方もいるので(価格で)、各自の判断にまかせるしかありません。
話しをもどすと、
この自生記録より発見から70年余りで消滅となった訳だが、逆によくこれまで残り続けてくれたし、有志で集まった会や地域ボランティア団体、様々な方々の尽力には感謝しかない。
この場を借りて、ありがとうございました。
フェンスの向こうが遊戯場駐車場、手前は自生地跡。
この自生地の個体群は、過去に市民の庭先や公共施設に危険分散されていた経緯もあるが、今回を期に正式に場所を指定して分散保存される。
今後それまでこの地を保全に尽力された方々が、分散された地の管理、保全を担うとなった様です。
だから完全消滅では無く野生絶滅となった。
詳しい事は各会の記事や魅力会が時系列を詳細に記事にされているので是非読んでほしい。
全国的に自生地消滅の原因としては珍しくない事例で、またかと言う気持ちでいっぱいで人間活動と環境を壊さないと言う事は基本両立しないのだと、あらためて思うと共に仕方が無いと言ういつもながらの一言で終わりとなる。
昔から断る毎に考える事がある。
生き物には人間の付けた識別する為の名前、学問では世界共通のラテン語表記の学名がある。
しかしながら同じ種類の生き物には何処にあろうと何処に居ようとも、その名前で呼ばれたり識別されたりする。
それには一定の評価や価値があるはず。
それがあるはずなら、日本で無くなっても居なくなっても地球の何処かに居たならあったなら、評価されるはず。
でも必ずしもそうではない。
何故だろうか?
それはあるべき所にあるべき姿で、居てほしいし有るべきだからではないか。
折角だからデンジソウを例にすれば、ある所にあってこそその評価や価値があるのです。
デンジソウは日本各地、アムール川から西の大陸各地に有るけど、宝泉寺池にあったデンジソウは、宝泉寺池に有ってこそ評価、価値が有るのです。
やっぱりそこに有る物を、
そこに有る姿そのものを、
自然の一部であるデンジソウを、
しかも宝泉寺池のデンジソウを見ることの出来る極めて贅沢この上無い、
この姿に最高の、変え難い価値が有ると思う。
仕方が無いと言う言葉で最後を飾るには何とも寂しいが、宝泉寺池のデンジソウが一個人手でなく公共の施設で保存される事になったのが、せめてもの慰みでしょうか。
地元有志の方々にお願いしたい事があります。
沢山の目撃者やそれと同等の明確な事実の元保存されれた後、是非今度は自生地付近に戻し再生を考えてほしいと切に望みます。
その理由は先に述べた通りで、一個人がいろいろな植物を栽培保存など出来るものでは無いし、多数の人の手で行う事です。
避難させその後に自生地を継続復活させた事例は、残念ながら植物では限りなく少ない。
成功例の一つになってください。
2023年、埼玉県内最後と思われる宝泉寺池自生地は消滅しました事を記して終わりにする。