喜右衛門園芸

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メストクレマ・ツベロスム 〜 樹になるメセン・・・ Mestklema属について

メストクレマ属は私が知る限り6種1亜種が記載されているが、流通する物は限られた種類な為実態を掴みにくいものです。

この事とリンクする様に、国内外で個体と種類が違って認識されています。

 

本当のところは今後の学者の研究結果でないと判りませんが、ある可能性について私感を書いてみたいと思います。

 

私感、考察です、論文等全く調べていません。

 

メストクレマ属は恐らく単独種でその中には別種は無く、精々亜種程度でしょう。

その中でも興味を持った頃から疑問であった物に macrorhizum と言うのがある。

特に国内外で流通し、やたらと実生で増えるメストクレマ・マクロリズムとして流通する物は、全て別属の植物です。

では何かと言うと、デロスペルマあたりの属植物ですかね。

たまにデロスペルマ属植物として苗や種子が流通しているのを見かけますが、どこでどう間違ったのか、皆さんが間違えて疑わない。

まぁ現在デロスペルマ属に含まれているものも再編が必要だと思いますが、どの様な形で決着がつくのか興味があるところです。

 

このマクロリズムは、花の構造がメストクレマ属とは明らかに違う。

この植物は自家受粉性が強く、メストクレマは栽培下で普通に開花しても種子が出来る事は稀です。

何故かは後述したいと思います。

そもそも記載のあるマクロリズムは別属に編入される植物で、メストクレマでは無いでしょう。

 

そうなると残るは albanicum、arboriforme、copiosum、elatum、illepidum、tuberosumがあるが、標本画、標本、画像の外観からの差異を分ける事は出来ないです。

唯一の違いは花色しかない。

基本になる物は花色が桃〜ワインカラーの紫系で、アルバニクム、コピオスム(花色は紫系だと思われるが標本や標本画からは読み取ることが出来なかった)、エラツム、イレピドゥムと分類されているもと、黄色〜白色の花を持つアルボリフォルメと分類されているものです。

 

10年程前に自生地から引き抜かれた転がしとして、紫系の花色を持つメストクレマがエラツムとして国内に入っていた。

やはり外観を観察すると花色以外には区別がつかず、(多少の葉の長さや断面の形状、節間等には差があるが、変異、または個体差の内である )花色だけではエラツムだとも断定できず区別がない。

またアルボリフォルメは白っぽい花を持つタイプで、白色〜薄い黄色の花を咲かせますが、しっかりした黄色の花を持つものも同種とされている。

この事は紫系の花を持つものも同様で濃淡、紫〜赤桃まで変化があります。

悲しいことだが、のアルボリフォルメも現地で何十年も自生していた物が引抜かれ、転がしで国内にも随分と入って来ていて販売れている。

更に国内で最も馴染みのある朱赤〜橙の花を持つツベロスムと分類されている。

そして国内ではツベロスムとして長らく栽培されていて、メストクレマと言えばツベロスムと言われ朱赤から朱樺色の花色を持つ物です。

このツベロスムとして入った、または実生された個体でも花色には濃淡があり、外気温の影響を受けるものの紫系、赤系とも退色が早い。

むしろ紫、赤紫で青い色素は気温が高いと消滅する事が判っていますから、ツベロスムと呼ばれているタイプの花は気温が低い5月頃または6月の朝は下地に紫がある朱樺色で、幾分寝ぼけた様な花色ですが、朝でも気温が高い7〜8月頃では咲き始めから朱赤で紫系が飛び赤味を増した花色です。

紫系の特に紫を感じる花色のタイプは、気温が高い時期では赤味の強い花色で、輝きのあるワインカラーではないかと想像出来ます。

 

 

結論的には、植物体に変異はあるもののあらかた同じで花色のみに違いがあるようで、花弁の長さ幅に変化があって印象が違うが、花の構造は同じ物です。 

花色は基本的な花色が紫系と黄系とがあって、それぞれが交雑することで誕生し、長い時間の中で固定されていった可能性があります。

だからメストクレマは1種類の単独属と思われます。

特にツベロスムと分類されている赤〜橙までのものは、桃〜紫系の花色の物と黄〜白系の交雑で出現した物と思います。

この事は同じメセンでConophytum属でfurtescens種の由来が自然交雑と考えられている事、また花色の出現の原理は国内の園芸コノフィツムで判っている事と同じです。

長い年月の間に同じ種の中で花色の違いが生じ、それがもとで更に違う花色を持つものが誕生した。

これらが現在も自然界で自生し、それぞれ幅のある基本色の子孫を残している事実がありますが、これらは花粉を媒介する昆虫の種類の進化とも密接な関係があるのではないか。

昆虫の眼がこれらの花色がどう視えているのかは想像すら出来ないが、昆虫の種類によって見え方が違うと言う事は判っているので、同種の植物であってもどの花色が子孫繁栄に繋がるのか、出来るのか命をかけた賭けに違いない。

その賭けがそれぞれの土地で一応成功しているみたいだ。

詳細でグローバルな研究がなされれば、花色と植物の分布、そこに暮らす昆虫の種類がリンクしている可能性もある。

なぜならそれぞれの花色を持つメストクレマが、その土地で今も自生している説明がつかないのではないか。

 

栽培下での考察

国内で路地栽培していると、通常で種子を採取する事はなかなか無い。

花は沢山咲くが花粉を媒介する昆虫が居ない為(花の構造上蜜腺まで届く長く細い口を持つ昆虫、チョウでは長すぎるし蜂虻、甲虫では無理がある、恐らくガガンボの仲間ではないかと)、自然な受粉は難しい。

仮にガガンボだとすれば、最花期である6〜9月までの暑い季節にガガンボは居ないし、ガガンボ以外の花の蜜をエサにしているガガンボ的な口を持つ昆虫は居るのか?って事になる。

家にあり実生から育てた朱赤の花を持つメストクレマは10年経っているが、毎年花着きが大変良いが種子が実っている形跡は全く無い。

元より自家受粉性に乏しいので、近くに別な挿し木(実生の親より穂木)の開花苗を植えてるが駄目だ。

やはり花の構造上人工的に受粉させねばならない様だ。

花の構造だが、ハマミズナ科によくあるタイプの花で雄花が雌花を隠す様に花の中心を覆ってしまっている。

しかも花を正面から見た時に、こちら側の中心に向いながらすぼまっていて、蜜を得ようとする昆虫は直接口を蜜腺につけることが出来ない。

雌花の脇に蜜腺があるのだが、雄しべが昆虫の侵入を妨げていて蜜の香りがして寄ってきても、蜜に有りつけないのである。

有りつく為には程々の細く長い口が必要で、必ず密な花粉を噴いている雄花畑を口が通らなくてはならない。

そして受粉するのだ。

昆虫には難しいとなれば、花を解剖して強制的に受粉させるしかなさそうだ。

露地栽培の個体はたまたま種子が鉢にこぼれて発生した実生を育てたもので、どの様な事で種子が得られたのかは不明だが、それ以降は種子が採取できた事は1度も無いです。 
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私の考察が正しければ、紫系の花を持つメストクレマとアルボリフォルメとされる黄〜白色の花を持つメストクレマを人工的に交雑させれば、ツベロスムとされている朱赤〜橙色の花を持つメストクレマが出来るはずだ。

仮に得られたら考察は限りなく近い真実に違いないと私は思う。

 

2023・8・6

自然状態では開花はあっても結実しないので、人工的に先月から受粉させようと細工していました。

やはり人工的にやれば受粉して結実するんですよ。

種子を採ってみないと何とも言えませんが、見た目では受粉には成功していると思われます。f:id:S-kiemon:20230806151959j:imagef:id:S-kiemon:20230806152021j:image
画像右の囲ったのは結実したものです。

スマホでは最大に寄っても限界で、ピントも合ってませんが御勘弁を。

 

2023・8・11

5月の下旬あたりから疎らに開花し始めて現在も開花し続けていますが、開花し始めた頃の訪虫はヒラタアブの仲間がよく来ているのを確認していました。

しかし6月に入ったあたりから訪虫を見なくなったので(いつも見ている訳にはいかないので、ちょっとしたタイミングで見ただけです)、ただただ花盛りなだけでした。

最近花を解剖して人工的に受粉させたりしましたが、常時50花以上が開花していますから面倒くさくなってしまいやっていません。

ここ数日の間に訪虫をまた確認しましたので、書きとめておきます。

ヤマトシジミと思いますが花の蜜を吸いにやって来て、およそ10分間に色々な花を周っていました。

これで受粉していて結実したら良いなぁって思っています。