喜右衛門園芸

植物栽培、観察、雑学、情報発信

カンザシキリンソウ と ヒメキリンソウ 〜 キリンソウ属 考察・1

はじめに

私はベンケイソ科Crassulaceaeは好きで興味があります。

このベンケイソウ科をウィキペディアで検索していただければ、この科の多様性に驚かされるに違い無いと思います。

直接の有用性は無いものの、多肉植物として栽培されている物が多く、世界的に人気な事を見れば間接的な有用性は非常にある。

 

その昔、東京大学名誉教授の佐竹義輔先生のご自宅を訪問してお話を伺う機会があり、その話の中で先生も仰っておられた学者の名を私はハッキリと記憶している。

近年の植物学者において、最高の頭脳と私は思っている大場秀章東京大学名誉教授の代表的研究に、ベンケイソウ科植物がある。

その事もあってセダム属からキリンソウのグループが分離されたのは、興味をひかれる出来事でした。

中央アジアから極東に至るまでの仲間を、セダム属から分離してキリンソウ属Phedimusとして一応落ち着いているが、我々の馴染みのあるキリンソウでさえ個体群の変異なのか亜種、変種または別種なのか、見た目で種を分ける材料は乏しい。

キリンソウは染色体数に変異があり、西日本に高次倍体の集団が多い事が知られている。

しかしその事と見た目の違いは、必ずしもリンクしていない。

国内に自生するキリンソウは学名上基本種の変種とされているが、では基本種とはどのようなものか?

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良い画像が無くステージが違うので比較には適さないが、葉の形態は確かに違いがある。

国内にも自生するホソバキリンソウが学名上の基本的なタイプで大陸に広く分布するが、今一つ明瞭な区別がつかないタイプも存在します。

ホソバキリンソウとして分けられる数々の個体群の中にも変異があり、国内キリンソウ、つまり学名上  var. floribundus の葉が細めのタイプであったり、ハッキリとそれとは形態や生理が異なる個体であったり、特に栽培品では困難な事が良くある。

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国内では広義aizoon種のみであるが、その中でも生理に違いがあるし考えれば考えるほどよく判らなくなってしまう。

我々が見て判っているのは、生体を観察した時に確かに形態、生理に違いがある、と言う事です。

 

しかしながら今日も大陸では局所的に新種が報告されていて、国内のキリンソウ達とは容姿がかけ離れている。 

中央アジアに広く分布しているグループと、東アジアに分布している広義aizoon種を結びつけると思われる新種も報告されている。

今年に入って、国内、海外の研究者達と共著でキリンソウ属の遺伝的伝播に関しての大変興味深い論文が出され、私が疑問視していた事、やっぱりと納得する様な素晴らしい論文が出て、大変興味深く読んだ。

形態分類である程度は判るが、やはり遺伝的情報での位置付けでないと判らない事の方が多くあるようだ。

 

Phedimus フェディムス属が一般の我々にも徐々に認識されつつありますが、我々の馴染みのある広義aizoonとその近縁種、中央アジアから極東にかけて分布するグループとは、植物の成り立ちにかなりの隔たりがある様に思える。

今後また再編されるのか、どうなのか、興味は尽きない。

この辺りの考察はまた別な機会に触れてみたいと思います。

 

 

 

今回はいつか書きたいと思っていた、カンザシキリンソウとヒメキリンソウの違いを栽培を通して見てみたいと思います。

ヒメキリンソウは正式に記載された明瞭な種だが、カンザシキリンソウと言う植物はあまり馴染みのない植物ではないでしょうか。

正式な記載は知る限り無く、どの様に誕生し現在に至るのか等未知な植物です。

当初借葉標本から生育良好のヒメキリンソウではないか?ヒメキリンソウの亜種ではないか?いや独立種では?、色々な考察があったと思うが、未だに証拠探しの途中の様です。

正式に記載するには国内をはじめ近隣国に自生するキリンソウ属の膨大な標本を閲覧、比較検討し新種としての証拠集めの必要があるが、多肉質植物体の借葉標本では形態分類には向かず詳細な生の違いが判りにくい為、なかなか困難だと思います。

 

※広義aizoon種とは東アジアに分布する基本種アイズーンと国内種、大陸で記載された既存の種を指すもので、国内種で言うとホソバキリンソウ(国内のキリンソウ  aizoon var. floribundusも含む)、エゾキリンソウ、ヒメキリンソウで、国外ではキリンソウ、オオバキリンソウやイヌキリンソウ、ケキリンソウ(和名がある物だけ抜粋)等を纏めた物を指す。

 

※文中に時折表現している広義キリンソウとは、国内のキリンソウと呼ばれ自生する基本的なタイプ以外に、地域や個体群により様々な変異を示すので、それら全てを含めた物を指します。

 

カンザシキリンソウ

栽培からの観察

この名前を知ったのは20年程前で、その頃は丁度植物から距離をおいていたこともあり、初耳だったのでこんな名前のキリンソウがあるのかぁ?と調べた。

調べたが学名は未だ種名が決まっておらず、未記載種で名前の由来等は調べきれなかった。

Phedimus sp. nov.

カンザシと言うのだから開花したときの姿や植物体の大きさ等、簪に見立てた事から来てるのだろうと推察した。

キリンソウ属全般開花時期には茎下部付近の葉は枯れて脱落している事がよくあり、花、苞葉、茎上茎の葉、棒状になった茎下部の姿とその大きさが、丁度カンザシ(簪)に例えられたのでしょう。

その後しばらくしてカンザシキリンソウを観察する機会を得た私は、栽培を通して他のキリンソウ属植物との性質や生理の違いについて、特にヒメキリンソウとの関係について調べてみたいと考えました。

 

カンザシキリンソウは地元の方のツテを頼って、自生地の種子を極少量送って頂き実生した。

入手した種子の結実が極端になくシイナばかりだったが、極少量の結実種子があり数本の苗を得る事が出来たのは幸いでした。

画像で野生状態は見ていたが、実物を見るのは初見で興味深く観察した。

2年目を迎えた頃広義キリンソウとの違いが出てきて、3年目で開花を迎えました。

その後大きな株にする事が出来、挿し木、葉挿し、実生とで増殖させ更に観察を続けました。

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半日陰は勿論陽当りでも栽培出来、真夏に遮光なし雨ざらしの環境でも枯れることはありませんが(日焼けはあります)、暖地での栽培ではキリンソウ属全般に起こる高温傷害がよくあります。

最も顕著なのは成長点の生育不良や花の不開花です。

それは長時間の直射があり気温が高くなる頃に傷害が出てくる傾向にあります。

ただ今一つハッキリと外気温に起因しているのか判っていませんが、その傾向にあるのは確かで毎年必ず出ます。

直射はあるが短時間で、後は明るい場所が長く続くような場所が特に暖地の栽培には適している様に思います。

そう言っても陽当りである程度馴らしたキリンソウを元に実生し得た実生個体の中に、一定数の障害の出ない個体もありますから、高温障害なのかなぁ?って言うふうに思っています。

確かに芽出して暫くはその様な障害はなく綺麗な姿ですが、開花に近づく頃(大体5月の上旬)には出始めてきます。

キリンソウ属は多肉質の葉を持っていますが実際乾燥は嫌い(乾燥気味でも栽培は可能)、湿った半日陰の場所で冷涼を好む植物です。

それなのに何故?ベンケイソウ科植物は多肉質の葉を持つ物が多いのか?

多肉質になったのは乾燥に耐える為だと思っている考えが、思い込みによるものなのかもしれませんね。

本来は暖地で平地の栽培には向かないし、陽当りの植物ではないです。

 

 

下の画像は半日陰の栽培で野生の姿に近い育ち方をしたものです。

株元付近の芽出した頃の葉は枯れて茎は横に倒れ、葉の付いている茎の先端辺りが斜上しています。

傾斜地等に自生している物はミセバヤの様に下垂している事も多々あります。

○で囲った所が根元です。

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これとは違って陽当りで栽培したものはガッシリとして、葉と葉の節間が詰まり葉の形状も違って姿は変わります。

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実生で当歳は直立する事が多いですが、その後成長に伴い茎が増えると同じくして茎は寝て、立派な塊茎を形成し地表付近に現れます。

また根元が塊茎となる事は広義キリンソウに見られる特徴と同じですが、自生地の画像を見る限り栽培の様に塊茎から多数の茎は出ておらず、数本の茎が出ているだけです。

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次に花の様子では、広義キリンソウと同様で集散花序で成長度合いにもよりますが、花数はそれなりにあります。

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花の大きさは8〜12mmほど、花弁先は尖り全体に星形の花で薄い黄色から少し山吹色です。

特徴的なのは花粉が入っている葯包の色は橙〜朱色をしており、裂開後急速に退色し花粉が飛び出します。

葯包が明らかに色づくのは、国内では他にヒメキリンソウしかありません。

上記の開花画像は陽当りでのもので時に乾燥にも耐えた鉢の栽培品ですが、乾燥する事が無い路地植えの半日陰で割と自生地に近い環境だと思っている物の、開花間近の画像がありましたので紹介します。

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よく育った花序をしていて、広義キリンソウによく似ています。

葉の縁に鈍い鋸歯がありますが、目立たず形状は倒卵形です。

 

次に葉の付き方についてですが、対生または互生と文献でなっていて、多数の生体を観察して判った事もあるので紹介したいと思うが、あくまで栽培下の事としたい。

実際借葉標本は栽培品では無く野生採集品であるため、上記の文献通りの葉の付き方をしているかもしれないからです。

その位慎重に見ないとキリンソウ属をはじめ多肉質の植物は環境での変化が大きい。

 

特に陽当りの良い場所の物たちは節間が詰まり判りにくいが、互生しています。

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しかし①〜④ではどうみても対生しているとしか思えません。

どの様な条件で対生になったり互生したりするのか、不明です。

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①〜⑥は対生と互生が混じっていますが、皆対生に見えるのではないでしょうか。

確かにそう見えるところはあるのですが、互生もあります。

対生モドキとも言える様な。
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こちらは半日陰の場所で2〜3時間は直射があたりますが、後は明るい影での栽培の場合です。

これならハッキリと互生しているのは判りますね。

対生が観察出来た場合もあります。f:id:S-kiemon:20230814070344j:imagef:id:S-kiemon:20230814070411j:image

実生の当歳を含めた若い個体では対生傾向で、開花に達してない若い個体では根元に近い葉でその傾向にある。

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画像は実生当歳でほぼ全てにおいて対生を示し、その後暫く特に上部の葉でも対生です。

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これも開花には至らない若い個体ですが、①では互生していて②では対生を示している。

成長段階で対生と互生が混在している。

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上から茎を見た時に対生、互生共に輪生になり、節間の短くなる上部で判りやすい。

開花する場合の集散花序直下の葉は特に大きく互生しているが、これは花序を包む苞葉の約目をしている葉と思われ茎葉とは違うが、茎葉と何ら変わらない葉がある為、明確に区別出来るものではないのかもしれない。

 

葉一枚の大きさは最大長さ41mm幅24mmに達したが、栽培では根張や陽当りで変わるため表現しにくい。

一般的に栽培では鉢内に根が張る為のスペースがある場合葉が大きくなる傾向にあり、葉数が増し根張が強くなる、所謂鉢から植物体を抜くと根鉢が出来て土が崩れない様な場合は、植物体、葉共に小さくなる傾向だ。

それは予めその年の芽出し時の状況で決まってくる。

小さく締まって根張の強い植物体で、その年の成長が止まった後に植え替えたとしても、そこから大きな葉が出る成長は示さない。

もし大きな葉を出すとすれば翌年の成長からです。

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広義キリンソウの変異、変種や地域変種からカンザシキリンソウを見た場合、やはり私は独立種と見る事が出来ると考えます。

当初ヒメキリンソウの亜種、変種の考えがあった。

それは葉の付き方や葯包の色等からであったが、栽培を通して考察したのは植物体の性質はむしろ小型の広義キリンソウに近く、私は未だ栽培した事が無いが、テカリダケキリンソウとして広く流通する物と性質が似ている様に思います。

機会があれば光岳産と言われるそのキリンソウと、比較をしてみたいと考えています。

ただ葯包の色は突然変異で出る様なものでは無い様に思われ、理由はわかりませんがこれはヒメキリンソウが関係しているのではないか。

四国山地に広義キリンソウの自生もあるし、分布域が重なっている訳ではないがヒメキリンソウも自生する。

遠い昔に広義キリンソウとヒメキリンソウとの雑種が誕生し、それがカンザシキリンソウではないのかと想像したくなりますが、飛躍しすぎでしょうか。

実際キリンソウ属は雑種が報告されていますから、満更否定も出来ない様な気もする。

この後に書きますヒメキリンソウの生育地の環境は、広義キリンソウとカンザシキリンソウともに明らかに違うし、その様な環境は好まない。

好まないと言う事は長い期間そこには無く、あったとしても何れ消滅してしまうと思われる。

自然遷移による環境の変化は時にその植物には打撃だが一方にとっては好都合な事で、その遷移が一瞬にして起こる事がある。

巨大地震です。

陥没や隆起の地殻変動で地形が変化するし、その後の侵食という遷移もあります。

植物地理学と言う学問からのアプローチはどうだろうか。

もし広義キリンソウとヒメキリンソウの接点となる環境が一時的に(数千年単位で)存在したなら、可能性はある気がする。

実際雑種起源と思われる植物が、種として累代可能を獲得している物は世界にあるからだ。

何れカンザシキリンソウが正式に記載され、ヒメキリンソウとの関係や、キリンソウ属のどの辺りの位置付けがなされるのか、楽しみに待ちたいと思い終りにする。

 

 

ヒメキリンソウ

ヒメキリンソウは四国産地に固有の明瞭な種で、若き牧野富太郎博士によって描かれた植物画はその特徴を余すところなく捉えた傑作です。

採集された標本はあったが、記載はされておらず後にロシアのマクシモヴィチにより正式に記載され、和名は牧野博士の物が採用されていて、近年属がキリンソウ属Phedimusに移されたことで、ハート博士によって再記載されいます。

花数は少なく葯包は朱色で全体的にスレンダーで貧弱な感じを受け、塊根から発芽して最初の1対の対生葉がつくのは通常で4〜50mm(開花個体で)の場所で、次の2番目の対生がつくのは更に3〜40mmの茎がある。

茎の断面は最大5mmに達し(カンザシキリンソウでは良好な生育でもその様に太くなる事は無い)、対生する葉は3〜4対しかないので、節間の長い間延びした植物体の様に思える。

しかし貧弱や間延びと言うのとはいささか違って、節間は陽当りによって変化するものではなく、それがヒメキリンソウなのです。

また茎葉は完全な対生で苞葉部のみが互生するが、何かの生理によって対生にならない場合はあるが、国内のキリンソウ属でヒメキリンソウ程安定した対生を示す物は他には無い。

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画像左は良く生育した時の物で地表から200mm程、茎葉は3〜4対、画像右は苞葉を含めた最上部の状態。

苞葉を含めたと表現したのは、矢印の場所は葉が互生しているという事を示したが、そもそも苞葉と言うのは矢印で示していない花に最も近い葉達だろう。

そうなると互生している葉達は何だろうと考えると、苞葉を更にサポートしている一番外側の苞葉、つまり総苞にあたるのではないかと思っている。

他のキリンソウ属も開花する茎は同じ様な事を示すので、この互生している葉は葉と言っても茎葉ではない。

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カンザシキリンソウと違って暖地での栽培にはなかなか困難なもので、家を空けることが多い私はかなり苦労させられました。

自生地の環境によるものが大きいので栽培には向かず、キリンソウだからとついつい侮っていると失敗する様な野草です。

恐らく国内のキリンソウ属中、一番栽培に向かない植物と思います。

決して乾く事がなく地表付近がかなり湿った水が滲み出る様な環境に最も生育し、冷涼で湿ったチャートを主体とした土壌上に自生する。

カンザシキリンソウは広義キリンソウ同様陽当りでの栽培も容易ですが、ヒメキリンソウは全くダメで貴重な1本を実験したのですが、夏までには溶ける様に枯れ果ててしまいました。

栽培植物として累代を重ねていくことが可能であれば変わるかもしれませんが、暖地ではきめ細やかな管理をしてもやっと維持出来る程です。

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カンザシキリンソウでも書いたように高温傷害が出ます。

4月までは問題なく生育していますが、5月になると成長点付近の葉がおかしくなります。 

画像左の様に花芽を包む様な葉に褐色のシミが現れます。

また花芽の成長が阻害され正常に開花しない、または開花しない様になります。

画像右は開花しない茎の場合で同じくシミは出ていますが、成長点付近の葉が覆うように曲って変形しこれ以上展開しません。

その代わりかどうか判りませんが、葉腋からの芽が発達してきます。

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左の茎は割と開花していたが後に高温傷害の症状が出たもので、葉腋の芽が成長し始めてきました。

右の茎は早い段階から高温傷害の症状が出てきて開花しない花があり、葉腋の芽がかなり大きく発達しています。

また画像の辺りの葉は全て大きく互生していますが、全体の姿は対生している茎葉あたりも節間が長いため、この辺りでの互生している葉は苞葉と見るべきなのか?ここまでを苞葉とすると茎葉は3〜4対しかない事になりす。

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画像の一番右の茎の様に○で囲った上の様に、上部の場所でも対生を示すばあいもあるし、少し互生する、大きく互生する事も観察された。

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概ね茎葉は対生を示し互生する物はありません。

 

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花は星型で花数は自生地の良好な生育でも10は超えない様で、暖地栽培ともなれば概ね1〜3で5までが限界でしょうか。

裂開前の葯包は鮮やかな朱色で、裂開と同時に失われます。

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開花がやっとだと1花と言う事も多々ありますが、右の画像では花数はありますが既に傷害が出ていて2つ目の開花が上手くいかない状態で、残りの花も開花には至りませんでした。

よく見ると蕾の先端に異常がが見てとれますが、最初の花は何とか開花に至りその直後に症状が出てきたのでしょう。

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現在まで実生が出来た事はなく、この様な房果があっても中に種子は無いです。

これも障害の影響ではないかと思っています。

 

不在がちな私の場合細やかな管理がどうしても出来ず、開花期などは特に不在が続いたりとなかなか難しいのが現状です。

一時は絶種してしまったかと心配しましたが、

春先に塊根が生きていたので助かりました。

あと他の広義キリンソウでは見られない興味深い事があります。

越冬方法は常緑または地上茎や発達した塊茎で越冬するが、それとは別にヒメキリンソウではムカゴの様な物でも越冬する様子が確認できたことです。

ある時2月頃に生きているのか確認する為、鉢内の表面やその周囲に何やら妙な物を見つけた。

 

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カメラの関係で画像が粗いが、前年の茎の残骸から出来たムカゴ的な物から再生する様子です。

画像で何とか確認出来るかと思いますが、④が茎節、②は発根しはじめた根で、①の茎節上部はコブ状で冬芽から発芽している。

③で茎節に割と近い場所までは腐りが進行し脱落して、それ以上は腐りは止まっている。

ムカゴ的と表現したのは、生体の葉腋に出来る様な物ではないが、多肉質の茎が根もない状態で横たわって、節付近だけが残って越冬するのはムカゴ的ですね。

多少の大きさの違いはあれど、長さ7、8mmで太さは1.5mm程の小さいものです。

僅かに発芽している物を見つけ、あたりに目を凝らすと幾つも地表面に落ちていて、用土色とよく似て判りにくい。

集めて別な場所に移して栽培したのが、下の画像です。

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ヒョロヒョロしていますが、よく再生したものです。

暖地栽培では7月下旬頃から下葉が黄色くなる物が出てきたり、そうでないものでも外気温が高いので休眠状態になって、秋を迎える事が出来る物は全体の6割程です。

後の4割は枯れている(塊茎も枯れてしまった)物と、僅かに塊茎が生きていて翌年に発芽するのは4割の内1割程度となっている。

しかし秋まで持ちこたえた物の茎が、この様な冬芽になる事が判った。

秋遅くに殆どが根元から腐りが入り倒れるが、

その後徐々に水分を失いながら腐りが進行していくが、外気温の低下とともに腐りも止まり上部の茎がながく残っている。

水分を失っているのもあるだろうが、ある部分に水分を集めている事も考えられる。

その部分こそ冬芽になる茎節付近で、水分と共に茎に残る養分も冬芽を形成する為に集めているようだ。

この現象についてはもっと詳細に調べて、

ここで更新してみたいと思い、長々書いてきた考察をいったん終わりたいと思う。