一期一会と言う言葉は若い頃から好きで、真剣に向き合い謙虚な気持と感謝でこの時この瞬間と向き合う、固有の誰にも邪魔されない、邪魔されることの無い時間の事です。
私は植物に限らず出逢いをそう思ってきたし、実際に殆どがその後その様な機会は無い。
ただそう言う事とある意味近い偶然の出逢いと言うものがある。
これは何時訪れるのか全く予期せず突然やってくる。
いや、やって行くだ。
相手はその時その場所にずっと居て、こちらがその時その場所に行かなければめぐり逢う事は無い場合です。
それはやはり幸運な事です。
ヒメシロアサザと言う植物を知っているだろうか。
本日その出逢いがあった。
現在は自生地を減らし絶滅危惧種にも指定されていて、急速に各地で姿を消している水生植物だ。
元々出現頻度は少ない植物ですが、自生地での繁殖力は悪く無い事が多い。
アサザも同じ運命を辿っていてとても寂しい限りだが、アサザと名が付くがヒメシロアサザはアサザに比べかなり小型で変異がある。
アサザは出逢ったことが湖沼、池のみだがヒメシロアサザは溜池の端に少しだけ在るような感じど水田近くの水路や水田雑草となっている姿だった。
明らかにヒツジグサやアサザとは住み分けていると思われました。
また各地の自生地毎で栄養状態では無い見た目の変異があり、研究者も各地のサンプルを用いた研究で指摘している。
今回出逢った個体群ですが、数キロ離れた一帯にも自生地があり、行ったことはないが水路と水田だそうだ。
かつて一帯の地域には無数に自生が点在していたものと推察しますが、その点在の多くはカモやサギ等の鳥に種子が運ばれたと考えられます。
過去に台風による河川氾濫があったり水難のあった一帯でもある為、その限りでは無いかもしれない。
最近の除草剤は素晴らしい効果がある反面、こうした水田雑草には無力で一度消滅してしまうと埋土種子の様なシードバンクを持っていない植物にとっては絶滅を意味します。
このヒメシロアサザの越冬方法がまた不明だそうで、ガガブタの様にハッキリとした越冬芽を作らないし、開花して非常に良く結実する種子生産は良い事である為、種子による物と推察されているようです。
同自生地の植物を少し紹介します。
イボクサです、この一帯でもあまり見なくなっています。
えぇぇ〜!イボクサなんか幾らでもあるけど、なぁ〜んて声が聞こえてきますが、ホントそんな感じなんですよ。
幾らでもあるのが何時の間にか一帯から消えてしまうなんて、珍しくありませんね、寂しい事ですが。
キカシグサです。
このキカシグサも変異がありますね。
他の部位もありますが、よく判るのは草姿の大きさです。
15cm以上の大型な物と5cm以下の小型な物、勿論栄養状態もあるのですが、大型の物から採種し栄養状態を変えて播種、非常に小型の物を同様に実験しても両者の形質は変わらなかった。
やはり大型の物、小型な物はそれぞれ遺伝的に固定されていて一年草で種子繁殖なので、一帯にはある程度固有の個体群、少なくともその辺の田圃では同じ大型なキカシグサ、または小型な、または中型みたいに出現するのを観察している。
こちらの個体は非常に小型で葉の一枚の長さは最大4mm、特徴である葉縁に透明な部分があるが、肉眼ではやっと見える程度です。
中央の立っているのがホソバヒメミソハギです。
こちらは偶に見かけますが、疎らに自生していて密に生えている事は無いですね。
ここには在来種のアゼナも自生していてますが、時期に取って代わられてしまう可能性があります。
コキクモです。
キクモと良く似ていて水性生育の場合パット見で見分けるのは中々難しいですが、秋に水を落とした水田に画像の様に陸上葉になっている事で見分けが付きます。
キクモは全体を密生した細毛が覆っている為艶消し肌で濃い緑色、コキクモは細毛は目立たずやや艶がある明るい緑色です。
ストレスがかかると真っ赤に紅葉した時は、よく見ないとなりませんがね。
ヒメシロアサザの自生地は現在非常に少なくなっている様で、自生しているが風前の灯的な状況にある様です。
然しながら埋土種子が残っていて、何かの好条件になった時に偶然蔓延る事があるかもしれませんから、完全に消滅したとは言い難い場合もある。
しかし宅地造成で埋め立てられた場合、そこを掘り返す事は皆無である為、その場合幾ら埋土種子が残っていたにせよ絶滅を意味します。
だから現状が昔と変わっていない場合微かな期待は出来るが、埋め立てとなって建物が建つともう元通りにはならない。
一度絶滅したと思われた植物が復活した事例はあるが、色々な地域にある隔離集団が復活した話は殆ど皆無で人知れず消滅している事は寂しい事だ。
2023・12・3
近くを通る用事があったので、現在の様子を観察してみました。
近くには全国的に増えている外来種で迷惑な、オオフサモが青々としています。
アレロパシー効果が強く、水質もかなり悪い環境にも強いので優先種になってしまい、在来の水草を消滅させてしまう迷惑なものです。
ありましたね、
この前に発見した時は稲刈りが終わっていた頃で、今年は暖かかった為にその刈られた所が更に伸び未だ稲刈りをしていない様な状態でした。
なので耕地は現在はしっかりと田おこし状態になって乾燥しています。
自生している所はそれがなされない為、一年中湿った所だからヒメシロアサザは残っているのでしょう。
ここも安定してしているとは言えませんので、耕地が放棄されれば乾燥化が一気に進み絶えてしまうと思います。
種子の確認は出来ませんでしたが、春に発芽の確認をしたいと思います。
やはりハッキリとした冬芽を作っているわけでは無く、ストロンで栄養繁殖した芽も同じ状態です。
抜いて根の状態も見てみましたが、生育期との差は認められませんでした。
外見での違いと言えば葉が下面にそっくりかえっている位でしょうか。
引き続き冬季の観察を続けてみて、ヒメシロアサザの越冬を見ていこうと思います。