喜右衛門園芸

植物栽培、観察、雑学、情報発信

彼岸花 〜 国内で近年人気のリコリス

御盆から初秋の花として様々な園芸品種も多く、近年は様々コレクションして畑に植えたり庭に植えたりする方々が増えて、人気のリコリスに就いて少し書いてみようかと思います。

 

古くから曼珠沙華と言われながら、かたや死人花として長らく縁起の悪い花として呼ばれていました。

墓地の片隅やお寺の境内によく植えられていたので、その様に形容されてしまったのだろう。

その頃は鮮やかな朱赤で雌雄シベが著しく吐出した花を輪生させた、ラディアタ種のみでその全てが栄養繁殖のクローンだったと思うが、何故か稔性の無い3倍体である事が判っています。

しかし全国に広まったラディアタ種ですが、芽変りで先祖返りの2倍体の稔性のある個体が見つかったりしている。

私はその先祖返り個体を見た事は無いが、大陸の物と比べたい興味がある。

何故国内に3倍体ばかりが広まったのか、それには多くの人間の手が関与しているのは明白で、その多くは仏教信仰者の手が多く関わっていたのではないか。

大陸では2倍体の種子が出来る物ばかりだが、植物体は一周り以上小さくミノールと言う亜種扱いで、キツネノカミソリ程の大きさと聞きます。

庭植えのまたは畑の境界などにはとても良い植物ですね、暑さ寒さに強く手間いらずなところが素晴らしい。

 

さて人気のリコリスだが、あいにく私はリコリスには昔からあまり興味が無く、最近頂いた交配種とキツネノカミソリしか栽培していない。

栽培とは名ばかりで何も管理していないが、植えたらそこから時期になれば花は咲くし、葉は出て気が付けば休眠している。

キツネノカミソリは実生で、今ではかなりの株になっているが、交配種は頂いた翌々年に開花し今年は花茎が7本あがっている。

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直射下では青い色は目立たず、日陰では良い色の様に見える。

これはヒラオブルー、リコリス#251、海外名はブルーパールと言う交配種で、元は育種家であり学者の平尾博士が見出した物で、アメリカの育種家に出したのが流通の始まりとある。

海外では人気のリコリスで、またたく間に広まった。

平尾博士は大陸から様々なリコリスを収集しそれらを使い育種していたと思うが、収集の過程で入ったものなのか、育種の過程で出たものなのかはっきりしない。

ただこの交配種の両親が判明していて、スプレンゲリー種と夏水仙の名で古くから栽培されるスクアミゲラ種の雑種とされているので、育種過程で偶発的に出たものかもしれない。f:id:S-kiemon:20230920124044j:image

もう一方の方親にインカルナタと表記されている場合もありますが、両方の方親とされている物も元来の原種と言うより雑種起源の栄養繁殖個体とされている。

雑種起源の植物体の稔性に就いても、雑種なので花粉が死んでいたり種子が出来ない等必ず何か障害を持っている為直接の子孫は残せない。

しかし雌は正常であれば他の種類の花粉を受粉すれば交雑して種子を得られ、雄が正常であれば他の種類に花粉が運ばれれば交雑し種子を得られます。

野生のこうした雑種由来の個体群は、かつて生育地が近かった頃のなごりですが、現在は互いに離れているので交雑する機会は減ったと思われます。

逆に庭の植物や庭園、半野生状態で植栽されている為交雑品が誕生する機会が多くなったかもしれません。

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ヒラオブルーの花を観察すると、雄しべは正常の様で花粉を噴いているが(他の種類の正常な雌しべに付けて受粉するかを確かめなければ判らない)、雌しべは死んでいて、柱頭は貧弱な物です。 

ヒラオブルーの花粉を使った交配が行われていても、もう結果が出ていても良い様な気がしますが、その様な情報は見受けられ無い。

先にも書いた様にスプレンゲリー、特に夏水仙のスクアミゲラ、インカルナタは国内では8月お盆明けには開花してしまう早咲き種なので、他の9月の御彼岸以降に続々と開花する種とは交配し難いのが原因かもしれませんね。

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今シーズンは暑さのせいで彼岸花は開花が2〜3週間遅れましたが、ヒラオブルーも遅れたので何時もよりブルーの色が良く出た様な気がします。

画像は日陰になった夕方の撮影でしたから濃く写っていますが、実際はブルーの部分は極薄い水色の様な色でカメラせいですから、ビックリしない様に。

でもこんな色合いの物が出来たら素晴らしいですよね。