” それは違うな ” はシリーズで時折私が目撃した間違いを指摘するものです。
人から憎まれたりしそうな事ばかり書いているのですが、それ程間違った情報やそれに附随した物が出回っている状況です。
今回も画像は一切ありませんので、興味の無い方はスルーしてください。
今回は竜田草に纏わる事です。
違うのは竜田草では無いので、竜田草については検索して頂けたら判ると思いますから、説明は省略します。
Jeffersonia dubia 、2種からなる小さなジェファーソニア属の一つで、早春に鮮やかな藤色から赤味の無い紫の花を多数付けます。
由来、来歴について少し説明しますと、国内に竜田草で流通する物の来歴には、大別して2系統あります。
古くから栽培されて来たやや花色の薄い物と、その後に登場した花色の濃い物です。
姿にも違いがあり、古くから栽培されて来たものは大陸から株を直接持ち帰ったとされていて、春先に葉と花茎がほぼ同時に成長し始めて、開花した時には葉も大きくなっています。
一方は花茎が先に成長し始めてその後に葉が成長し始めますが、開花した時に葉の展開は未だ不完全なものです。
現在は竜田草と言えば後者が栽培されている事が殆で、古くから栽培されて来た物は廃れて来ています。
実生もされて、姿の良い物、花色のより濃いもの、白花品が選別されています。
因みに白花品は20年余り前にヨーロッパで出たものだが、各地で実生がされたので幾つかの系統があります。
現在は実生による個体数の増加で、国内でも個体数が増えた事は喜ばしい。
話を戻すと、この後者についての来歴を書きます。
今から四半世紀前の事ですが、ロシアの野草種子を販売しますと海外に広告が掲載されました。
国内でも何人かが購入したし私も購入した一人で、そのリストに竜田草の種子もあり非常に興味深いリストでした。
そこで扱っていた種子は、主に沿海州を中心にオホーツク海をぐるっと囲む地域より採集した現地種子、または採集した種子を播種し苗を育てて採取したガーデンシードであった。
当時はヨーロッパでも極東地域の植物種子を入手するのは至難で、これを扱った物は大変センセーショナルだった。
それまでヨーロッパにおける極東の植物であった竜田草と言えば、日本国内にあったものからの種子または植物体を直接導入したもので、先に書いた花色の薄いタイプのみであったので、実生が初開花した時の濃い花色はショッキングであった様です。
その後直に大量に実生が行われ白花品も出たりしたが、自家受粉性が強いのか極度に濃い花色などの変化には乏しい様です。
確かに自生地の大群落を見ても、皆同じ様で白花品等は皆無です。
そのカタログには採集地ノースマンチュリアとあり、それを購入し実生した業者が苗を販売した。
その時はちゃんと北満洲と記載があった。
そして種子が多数採取出来た一部を、信州にあった種子を扱う業者に寄贈したが、その時に間違いが起きたのだ。
種子を寄贈した業者はパッケージにノースマンチュリア、満洲(中国東北部地域)北部採集に由来する種子であった為、それを書いた。
しかしパッケージには種子も入っていたので、書きにくかった、しかも漢字を。
だから略してカタカナで書いてしまった。
それを提供された業者は、ホクマン → ホフマン と理解し種子を苗を販売した結果、
いつの間にか広く間違いが浸透して、竜田草(ホフマン)とか、ホフマン系竜田草なんて事になったと言うお粗末な結果です。
ク → フ と間違えたのだが、提供する側される側双方にもっと気遣いがあれば防げたのではないかと。
この話を読んで皆さんはどの様に感じられましたか?
ちょっとした事がその先に間違いが広がる原因になってしまうんです。
間違っても仕方がないが、後の早い段階で訂正して広く発信し続けて欲しいものです。
竜田草(ホフマン) →
人の名前じゃないんだよ!
ホフマン → ホクマン → 北満
→ 満洲北部より採集された種子 に由来する
だから竜田草(満洲北部)とするのが正しい。
庭や畑に地植した大株が数十株もあり開花した姿は圧巻で、用土は場所を工夫すれば丈夫なガーデンプランツなので、皆さんもやってみては如何でしょうか。
P.S.
ここに書くのは違うが同じ事例を見かける物に、オロスタキス・スピノサ ex. ボンゴレアと表記されている物がある。
これも ボンゴレア → モンゴリア が正しく
モンゴル領の西の端でアルタイ山脈に近い地域より、採集された種子に由来を持つ個体達と言う意味だ。
当時の幾つかのカタログにはその辺りから採集されたオロスタキス・スピノサや形態的変異のものの種子が多数出ていた。
まだその当時から得られた物達は維持されているのを見かけるが、日本人も見習ったらどうかな?
発芽の良い物、全く発芽しない物様々あったが、懐かしい思い出だ。