喜右衛門園芸

植物栽培、観察、雑学、情報発信

Conophytum garden hybrid No.18

園芸コノフィツム覚書き・No.18

“ 小槌 ” について

学名wittsteiniiに対応する流通名は複数ありますが、直に思いつくのは “ 雨月” と “ 小槌 ” ですが皆さんはどうでしょうか。

 

現在はどちらも流通名になってしまったのですが、元々は個体名として各一つ一つのクローンのみにつけられていた名前、個体名でありました。

どちらも元は輸入された幾つかの個体の中で、葉姿の特徴や花色から選ばれつけられたものですが、販売までに葉を分けて苗を作る間もなくニーズが高まり、ユーザーの希望に押し切られる形で流通に乗った為、販売元でもクローンや同時期に輸入された個体を使った実生が盛んにされた。

この様な事は雨月、小槌の様に原種由来の個体に限ったことではなく、園芸交配種でも起こっていました。

→ 園芸コノフィツム覚書き・No.1 " 花園 " 参照

 

運良くオリジナルを購入出来た方は運が良かったが、大抵の場合幾つかのクローンを使って得た種子による実生品を小槌として入手されたに違いない。

確かな販売元で小槌として購入したので、現在まで小槌として栽培して来た事に何の疑いも無く、栽培を続けている方々が意外と多いのは知られていません。

今一度ご自分の栽培品をよく観察されては如何でしょうか。

 

またこの様な事実を突きつけられた古参の方々は、素直に事実を受け止められず意固地になるかこちらをクレマー呼ばわりする傾向にありますね。

だから明確な証拠となる画像や実物が必要となります。

f:id:S-kiemon:20230322074846j:imagef:id:S-kiemon:20231207073917p:image

著作の関係でコノハンの画像を出したらマズいとは思っていましたが、未だ疑の目があるのも事実なので、記載に踏み切りました。

田中さん、大目に見てください!

コノハンに記載されている画像とよく似たアングルで撮影しましたが、所有者の話では近年他界された方の持ち物だった様です。

ずっと小槌の名で流通する多くの個体に違和感を抱いていた私にとって、やっと疑問が解けた瞬間でもありました。

小槌の名で私が栽培している個体の札を訂正して、カタカナ表記のウィットステイニイにしなくてはなりませんね。

実際に小槌の名で流通している個体とオリジナルの個体とは、葉姿で見分けが付かないとは言い切れず、開花すれば一目瞭然です。

また黄花小槌は小槌と付いているが、黄花で大型のフラヴァ厶で違う種類です。

それとは別に大型小槌と呼ばれるものがありますが、葉色と質感が違い小槌より遥かに大型の個体達です。

個体名ではなく複数の大型個体が存在しますが、葉色は紺碧一色な事は共通しています。

因みに " 雨月 " ですが、やはり輸入品の一つに付けられたものですが、当初から幾つかのクローンを呼んだものです。

早い時期から実生もされ、またこの小槌、小槌の実生個体等と交配されて得た実生個体が雨月として流通した為、当初雨月と呼んだ特徴が失われてしまったようです。

現在も当時の " 雨月 " 的な特徴を残した個体も見る事が出来ますが、園芸的な特徴としては弱くその名前をあえて付けるには至らないと考えます。

雨月は流通名の一つで、また別な時に書いてみたいと思います。

 

2023・12・7

以前から" 小槌 " として栽培している、または流通しているオリジナルと大変よく似たクローンとのツーショットを昨年から撮影したいと思っていました。

しかし花時期が合わず(休眠明けのタイミングであって個体の差ではない)、ご覧の通りです。

私と棚の所有者との予定も合わなかったので、またの機会があればチャレンジしたいと思います。

f:id:S-kiemon:20231207074839p:image

違いがお判りになりますか?

花色はどちらのクローンも濃いので差異は感じられないし、葉姿や細部にも違いはあるものの明瞭ではないし、生育状態にもよるので判別がつきにくい。

しかしながら花の大きさはオリジナルの方が大輪で、画像ではそこが判りにくいのが残念です。

オリジナルは輸入による物なのは事実で、輸入ともなれば1クローンである事は考えにくくこのよく似たクローンはその時に一緒に入った物、或はこのオリジナルよりの実生のどちらかです。

恐らく花色だけならオリジナルと差が無いので、株分のみでは愛好者からのニーズに応えられないと " 小槌 " として流通させたと思われ、実生であった場合も同様です。

昔から個体名(1クローンの株分けのみに付けられた固有名)だと思っていたものは固有名では無く、複数のクローンが初期または最初から存在していたと思われます。

そもそも個体名を付けて分けるには特徴が曖昧で、限りなく唯一無二の存在では無いのがこの様な事を招く結果と思います。

 

コノハンでも花色が濃いと解説されているので、花色だけ見たらそうなりますよね。

でもオリジナルは大輪なのも事実でありますが、この程度の差異を分けて考えますか?

皆さんはどう感じましたでしょうか。

もし個体名 " 小槌 " として分けるのなら、花色が濃く大輪のコノハン記載の個体をあてて、大変よく似たクローンは " 小槌 - A " とか -B とか、

とでもするのが良いのでは?

" 安珍 ヲ " みたいにね。

だけどそんなの意味ある?