喜右衛門園芸

植物栽培、観察、雑学、情報発信

Ruschia & Eberlanzia メセン・4 トゲメセンと呼ばれるもの達

ルスキア・スピノサ、エベルランジア種

女仙と呼ばれている植物には様々な特徴を持ったものがある。
その中で今回は棘女仙と呼ばれる物をとりあげます。
国内でメセンは多肉植物として扱われ、大体が葉や茎が肥大して全体的にコロコロとした丸みのあるイメージがあります。
しかしこのトゲメセンに含まれる植物達は、葉は多少多肉質ですが決して多肉質ではない茎を多数分岐させ、硬く肥大することなく多数分岐しブッシュに成長します。
そして最大の特徴であるトゲを持っているのです。

トゲは何時も形成されているのではなく、何だかの法則的な事がある様に思います。
花芽が形成されるのとトゲが形成されるのとは、成長する過程が同じでどちらかが出来てきます。

また通常の葉が展開する場合は、花芽もトゲも形成されずその枝はしばらく葉が展開するだけ(枝が伸びる)です。
栽培下でこのダラダラと伸びる枝が、樹形を悪くしています。
一方トゲや花芽が出来た枝は、そこで成長が止まり新たな枝が2本出でるか、成長が止まり枯れます。
これらの特徴はメセンの大多数が持つ特徴なのですが、トゲメセンの仲間は枝の成長が止まった後に硬いトゲがずっと残り続けるのです。

それを繰り返していくうちにトゲに覆われたブッシュになっていくわけです。

私は初めて実物を見たのが、知っている方の棚でしたが丈は60cm、幅は25cm程で強堅なトゲに覆われた見事な樹で感動しました。
やはり定期的に枝を切ったりして整えているようで、栽培下ではトリミングの必要があると思われます。
野生下の様な厳しい環境ではない為、ゆったりと好き勝手に伸びた枝は時にカッコ悪くなりがちです。
希に良型と呼ばれるような自然に樹形が整う様な物も、実生では現れるかもしれませんが、その様な事も稀なのでトリミングは必要です。


一般的にトゲメセンは他の物と違って挿し木が難しいと色々なところで書かれているのを見ていました。
実際先に書いたスピノサ種の巨大な樹を御持ち方も言っておられました。

しかし私はスピノサ種を入手する遥か前からそんな事はないと思っていて、何時かスピノサ種を入手した時には試してみたかったのです、挿し木を。

有名な方が小さな実生苗を販売していたので入手してから4年あまり、ようやくその機会を得てトリミングし挿したのが上の画像です。
2つの画像のうち上が2年前で、
それらが活着し枝が伸びた為、更にその翌年にトリミングして挿したのが下の画像です。

ほぼ100%近い確率で挿し木に成功しています。
私が挿し木を試すはるか以前に、机上考察していた事を除けば、挿し木は難しい事はなかったのです。

稀に販売されていて、コメントに挿し木は難しいと書かれているのは、ウソ です。
皆最初に書いた、言った人の情報を引用しているに過ぎないのです。

そしてこれが入手した実生苗で枝を取った元の樹です。
好き勝手に延び放題にしたので枝振りはかなり酷い物でしたが、段々と少しずつ良くなって来ました。
しかしながら挿し木をした方が、成長する枝を想像して挿し枝を整えて挿し木をしますから、良い樹型のものを簡単に得る事が出来ます。


次はエベルランジアと言う仲間ですが、スピノサ種よりは柔らかなトゲを持っている小型種です。
ピノサ種もルスキア属になっていますが、エベルランジア属になっていたりしていて未々学問上意見が分かれる様で、混乱しています。
ピノサ種の画像に属名を載せていないのは、そのためです。

メサガーデンの種子より実生した苗ですが、しばらく栽培しているとチラホラと花をつける様になります。
花は小さめで薄めの色合いですが、画像の様に沢山開花すればとても美しいです。
意外とここまで待つのが痺れますがね。
栽培ではある程度節間が伸び枝にコシが少ない為、クネクネと枝がなってしまうのを軽減する為にスパルタ環境で栽培していました。
その結果親苗はいじめ過ぎて枯れてしまい、開花画像は以前に挿したものが挿し床にそのまま残っているものです。
ルスキア属は移植を嫌う、特に灌木になるタイプはその傾向が強い様に思いますので、じっくりと静かに放って置くくらいの栽培が良いですね。
性質は丈夫ですからある程度厳しく育ても問題ありませんが、私の様に厳し過ぎるのはよくありませんね、栽培ですから。

次は昨年スピノサ種として丈3cm程の実生苗を入手したもので、現在は20cm弱に成長したものです。
非常に小さな葉を繁らせていて、上記のスピノサ種とは明らかに違うしトゲは未だ一度も形成されていない。
これから形成されていく事を期待してしますが、今のところ品違いの方が有力です。

P.S.
後日この苗を入手した方が、
ピノサ種で入手し播種したものだか、
Ruschia cradockensisと言う種類が有力で、種子カプセル等詳細を調べた結果、ほぼ間違いないでしょうと言うという事を書いていました。
私の所では未だ花を付けていないので外観を見るしかありませんが、酷似しているので間違いないのでは無いかと思っています。

最後に何故トゲを発達させる必要があったのか?
と言う疑問は誰もが持つ疑問だと思います。
サボテンたちのトゲと同じ意味なのか、全く違う意味があるのか興味は尽きない。
画像は樹になるメセンと言われるメストクレマ属の植物で、実生から7年花壇に地植していますの物です。
赤丸で囲った所はかつて花が咲いた枝の跡ですが、トゲ状の枝跡があります。
ずっと残っていて、自生地の大きな樹にも全体的にあるのが確認出来ます。
やはり他に食べ物が無いような場所で、動物に食べられないようにしているのでしょうか。



2023・2・28

随分前の研究成果を遅ればせながら読んだんですが、ルスキア属とエベルランジア属との差異は鞘(種子が入った部分、カプセル等と呼ばれる)の構造と花の大きさ、葉の形状にある様です。

現在少ないながら流通する棘を持つ物には、Ruschia spinosa、
Eberlanzia disarticulatus
数タイプの未同定種がありますが、属を分ける最終的な特徴はやはり種子カプセルの構造で、エベルランジア属は特殊な様です。
最新の研究成果ではありませんが、文献毎に違う属に含まれている植物の再検討を行い、棘をもつものの殆がエベルランジア属になっていたがその殆どをルスキア亜属としてルスキア属に移したと書かれている。
エベルランジア属にはセドイデスと言う種のみが残されていて、花は小さく花弁を持たない変わった物とされている。
また幾つかのエベルランジア属に含まれる種が発見されたが、記載論文が発表されていないとも書かれていたので、現在の分類が気になるところです。

栽培を楽しむ園芸の中ではまだまだ混乱すると思われますが、僅かに流通する物はエベルランジア属ではなくルスキア属植物だと思った方が良さそうに思いますね。
たからこちらで紹介した3個体のスピノサ、ディサルティクラツス、と品違いの物は、皆ルスキア属です。


2024・3・10

Ruschia sp. from Mesa garden seed
こちらは今シーズンになって開花する様になり、昨年末から先月にかけてゆっくりではありますが、長い期間開花していました。


花はスピノサ種に比べて小さく1.5cm程で、厳冬期の花です。
開花している時は全く判らない、いや無かったのですが初めて棘らしき物が生えて来ているのに気がついたので、画像に収めました。
ピノサ種と良く似た未同定のこの個体は、棘が花芽と同枝に出来る事を初めて知りました。
ピノサ種は先に書いた様に、棘と花芽は相対関係にあり同枝には出来ない。

この事からよりスピノサに似た種類であるこの個体も、先にエベルランジアと紹介した物と同じタイプのトゲメセンである事が判ります。
若い茎が赤く染まり当初茎の赤いスピノサ種では無いかと思われていましたが、全くの別な種類でした。
棘を持つルスキアの仲間は大多数のルスキアとは違い亜属として扱われる事がありますが、同じ棘を持つ他のルスキアの中でも硬い強固な棘を持つスピノサ種は、もしかすると全く別な属に分類される植物かもしれないと最近になり感じています。