喜右衛門園芸

植物栽培、観察、雑学、情報発信

Conophytum garden hybrid No.14

園芸コノフィツム  覚書き・No.14

“ 聖火 ” 

 

“ 聖火 ”  は、信州にあった錦園より発表された交配園芸品で、早咲きでまだ気温が高めな頃にしては赤さがある花を咲かせます。

 

交配から言えば、紫、桃色系の花色と黄色系の花色を持った個体同士の交配から、赤色系の花色は生まれる事が解っている。

しかし、精々明黄橙色〜橙までで、赤燈、濃赤色には簡単にはならない。

なので、実際それ程単純なものではない。

 

交配園芸品を親に使って狙った花色を作るのは意外と難しく、交配園芸品の花色は遺伝的に複雑に絡み合い、現在の個体の花色になっているからです。

野生品由来で、黄色い花、桃色花を咲かせている個体からセルフ実生すると、黄色い花、桃色花の持つそれぞれの個体を得られるし、極稀に白花品等の変わり物がでる。

通常はそうだが、交配園芸品はから得られる個体の花色は、その親からは誕生しない花色が出たりするのです。

 

これは何を意味するかと言えば、多様な花色の遺伝子を持っていながら、たまたま今の花色を咲かせているに過ぎないという事で、色々な花色を咲かせる多様性を現在既に

持っていると言う事なのです。

 

また花色は見分けがつかなくても、葉の形状や本姿で見分けがつくものがあれば、その逆もあります。

何れにしても札落ちや品違いになってしまうと見分けるのは困難な事は明らかで、その品種の発表当時の詳細な画像等は埋もれてしまって、私達の目に触れる事も無い為困難を極めます。

 

話を戻しますと、

販売カタログによれば “ 聖火 ” は、赤花早咲き、東京オリンピックに開花、紅紫花とある。

1964年、条件によるが6〜10月の間に初開花したと思われます。

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様々な栽培条件(気象、陽当り、地域、水やり管理等)によって開花時期はかなり変動しますから、必ずしも毎年同じとは限らない。

朝晩の気温が低くなる秋中盤では花色も冴えますが、まだ残暑のある8月中下旬では代謝が早く退色、一日花の様に終わってしまいます。

 

花色は花弁が伸びきる前の咲き出しはかなり赤く伸び切ると薄くはなるが、これも条件でいわゆる赤さを感じる赤花です。f:id:S-kiemon:20220221070535j:image

画像は夏季の水やりを止めている間に、蓄えている水分で生育を開始し開花したものですが、

気温が高いにも関わらず咲き出しは結構赤いですね。

咲き進んだ花を観察すると中心部の花弁には、複数の花色が重なって表現されている事が解ります。

桃紫の上に朱色が重なる事で赤いと呼べる花を持っています。


長らくこの “ 聖火 ” と同様に観察を続けた花があります。

10数年前に海外から入手した “ seikoha ” と名されたクローンです。

レッドフラワーと解説された物だったのですが、この名前が何か日本の交配種に付いた個体名ではないか?  と思いながら購入しました。

 

意味を漢字に変換できない事や該当する名前がない事から、よくある事例を思い出しました。

日本語を海外の人が発音をローマ字に変換する際に間違える、またはローマ字に直したメモ、札に書いた字が雑で見間違える。

これらはスペルを日本人が見間違う事や発音をカタカナにする等、逆もある変換ミスです。

 

では “ seikoha ” は何の間違いか?

これが “ seika ” = “ 聖火 ” だったのです。

毎年観察し続けた結果、同一のクローンである事は間違いないです。

今年の正月に販売店にこの旨を伝えて訂正をする様に要請しました。

その際に由来、来歴を聞いたのですが、

「かなり昔に来店した客らかの物だろうと思うが、正確には判らない」との回答であったが、

“ 聖火 ” の様な赤い花は、野性原種やナチュラルハイブリッドを珍重する中で、人工交配とは言え目を引いたに違いないです。

海外ではすっかり “ seikoha ” で流通し、栽培している方々が画像をアップしているので、ワールドワイドなツールでも、栽培している海外の方に向け訂正を呼びかけました。

 

国内で私が確認した物を書き留めておきたいと思いますが、皆さんが知らず知らず入手した物の中に 違う札が付いた " 聖火 " があると考えます。

" 聖火 " の同一クローンが他の名前で流通していた事例では、ホームセンターで見かけるコノフィツム一色の札が付いた物の中にも稀にあるのを確認しています。

偶に札が色々な品種が販売されている中で、

たまたま " くす玉 " の札が付いていた物があり、一瞬で違う事はわかり購入して精査したした結果そうでした。

たまたま " くす玉 " と言う品種の札が付いていましたが、勿論違う名の札が付いている事もあるでしょう。

 

各愛好家が販売サイトで販売する場合や生産者のサイト、店頭販売で見かけた物では、

" 赤花世尊 " での販売がありました。

5、6年前から現在に至るまで、販売サイトにて時折この名前で販売されている物を見かけます。

一目見て違うのは理解出来たのですが、オリジナルと比較する都合があり早い段階で入手して精査しました。

結果 " 聖火 " である事が判明しましたので、機会があれば伝える必要があります。

因みに " 赤花世尊 " とされた物は、原種由来でfrutescens 種 でsalmonicolor として輸入されたものを " 赤花世尊 " と呼んだ物ですから、園芸品ではありません。

現在も極僅かながら当時のsalmonicolorの名で輸入個体が残っていますが(古来品の" 寂光 " = frutescens の方が残っています)、その後にfrutescensで輸入された個体や実生された物の方が見受けられます。

そもそも年数を重ねる度に潅木状になる葉姿にはあまり人気が無い(姿が乱れやすい為)ので、栽培個体は少ない様です。 

" 聖火 " には見られない特徴ですが、この様な特徴は他の園芸品種にも見られます。

ある段階に frutescens を交配親に使用し、その血が表面化した結果でしょう。

" 黄金の波 " や " 絵姿 " はその代表で、15年植え直しや仕立直し(葉挿し)をしなかったものは、茎が10cmも立ち上がりました。

 

" 浮世絵 " と言う品種でも販売されいるのを見ました。

" 聖火 " とは花色では見分けが付きづらいですが、葉姿はかなり違うので判別がつきます。

あとは " サマーレッド " と言う名前でもよく流通していますね。

この " サマーレッド " と呼ばれる個体の中には良く似たもので別個体が有りますから、全てが " 聖火" と言う訳ではありません。

これら " 聖火 " と混同されている

" 浮世絵 " 、" サマーレッド " に就いては別な機会でいづれ解説します。


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以上、" 聖火 " の解説を終わります。