喜右衛門園芸

植物栽培、観察、雑学、情報発信

Conophytum garden hybrid No.1

園芸コノフィツム 覚書き・1 “ 花園 ”

コノフィツムリトープスを知ったのは、もう40年位前ホームセンターで販売されていたのを見たのが最初だった。
その後本格的に栽培を始めるまでおよそ30年。
これらを含めた多肉植物全般は園芸植物としてとても面白く、また都会での栽培に適した物だと私は思う。
(私は都会には暮らしていませんが)

前置きはこの位にして、
原種由来のConophytumは殆どの種類が判別出来る(プラントナンバー、産地データなどを付けることが出来る個体)が、原種でもデータ無しで札落ちのもので何だかよく判らないものは幾らでもある。
原種だったとしても、何だかよく判らないものは交配(原種で同種間で掛け合わせて得られた種子による実生品)なのか判らない。
これが交雑(元は原種で異種間で掛け合わせて得られた種子による実生品)ともなれば札落ちは尚更、札が付いていてもそれが株分け品のオリジナルなのかどうかは、現在もう判らなくなっている。

園芸コノフィツム(交雑品)はもう取り返しがつかない程品違いが起きていて、状況を説明するにも簡単ではない。

何故簡単ではないかと言うと、

① オリジナル名称に対する個体は1個体(1クローン)ではない。
② 大変よく似た個体が多数存在し、それ ぞれにオリジナル名称が付けられている。

大まかにこの様な事が考えられます。

①に就いて説明しますと、個体名(通称和名ではなく、選び抜いた1本に付けた名前)は、1個体(1クローン、オリジナルクローン、株分け品))に付いているはずだが、実はそうではない事が判っています。
一つの個体名に複数(最初に選んだ個体とは別にその時の兄弟個体や、後の実生で非常によく似た別個体など)が存在します。
複数の存在は、何れが最初に選んだとか何れがその個体名になるのか等、もうオリジナルと言う事自体無意味になっているのが現状です。
一つの原種(種の学名)に対応する通称和名(流通名)が付けられている事が国内で多いが、この名称とオリジナル個体名(クローン名)と正確に認識されていないのも原因です。
また余程変わった物でなければオリジナル名称は付けられないはずだが、少しの違いで(他に無い花色とか、葉の形等)名付けられた物が大多数なのが現実です。
また名付けたオリジナルの説明が不十分(言葉で表現するのは無理があった→似たものが多過ぎ)で、名前だけが独り歩きして品違いを起こしているのも事実。

話が前後するが、品違いを起こすそもそもの原因も、他と見分ける明確な特徴(その特徴は他に類を見ない)を持っていない為に起こるのだ。


実物ではなく画像だから細部まで判らないと思いますが、左右で別個体なんです。
見分けが着かない、着きにくいと思います。
これら2クローンは同一の個体名が付いています。
左右で元の愛培者は異なり、栽培者が購入した時期は4年違います。
購入者(故人)は発売当初、自ら出向いて詳細に確認して購入したと聞きました。
何故なら、当時この様な花色を咲かせる物が未だ無く(未だ無いのは表向きで、実際は発売直後には良く似たものが既にあったと聞いています)写真も無いから、半信半疑だったようです。

あくまでも真実に近い推察、考察をします。
ガーデンハイブリッド(閉鎖的環境の中に親となる個体を置き、開花のタイミングが合ったもの同士を人為的に交雑させる)で得られた種子を実生する方法で、これまでの園芸コノフィツムは殆どこの方法で作られて来た。

どの様な物を作りたいか(狙った交雑)ではなく、偶然出来る様々なものから少しだけ変わった物を選別するやり方だ。
これを何十年も毎年やっていれば、似た様な物は兄弟個体でなくても時を隔てて出来てくるのです。

需要が高まってオリジナル個体の株分けだけでは趣味家のニーズに対応出来なくなってしまう為、後発で確認した実生品の中で酷似した個体をオリジナル品に含めて対応したのだろう。

また最初に選別したオリジナル個体より、後発でよく似た物の方が観賞的に優れていた場合もあったでしょう。
そうした事で、一つの個体名の中に複数のクローンが存在した
のだと思います。

その第1号が園芸コノフィツムの始まりとも言える " 花園 " で既に始まっていたのは、なんとも皮肉なことです。

ここで " 花園 " と言う園芸品に就いて触れたいと思います。
皆さんは " 花園 " が凄く花色が濃いと思われているのではありませんか?

花色はそれ程濃い訳ではなく、同じ園芸品の " 祝典 " の方が赤橙色と表現されている様に、赤みは強いです。
" 花園 "は朱樺色、濃橙色と言う表現がされていますが、少しくすみがあるオレンジと言うところで、赤みは感じられない色味です。
" 祝典 " は中心部に黄色があり、それが花弁にまで(花弁長の2割程)の範囲に及びます。
一方 " 花園 " は黄色の部分はあるのですが、ロート状の下筒部(奥)のみにあるので平開してもくすみのある朱樺一色(開花時期の気温が高い年は極わずか中心付近に黄色が覗く事がある)なのが特徴です。

色々な園芸店のカタログには、様々な園芸品の名前が登場しています。
また東日本と西日本で同じ園芸品(同クローン)で名前が異なる場合もあります。
その中にはその園芸店だけでしか見つからない名前もあるし、大抵の園芸店でよく見る名前もあります。
いずれの場合でも各オリジナルに就いて、詳細に説明されている事はなく、名前のみが残っている状態です。

現在古来品の中で画像や資料などから識別出来る園芸品は僅かであります。
(それだけ御互いに似たものが多く、言葉では説明出来ない、花色等は特に無理がある)
それ以外は名前のみ(少ない画像、若しくは資料があれば良い方です)が残るのが実状です。