喜右衛門園芸

植物栽培、観察、雑学、情報発信

Conophytum garden hybrid No.2

園芸コノフィツム覚書き・2 “ 銀星殿 ” と“ 銀星 ”

園芸品の中で白花は幾つかある。
現在流通していない物が多いが何故なのか解らない。
若干増えが悪い感じもするが、白花だからと言うわけではない。
それぞれ親となった個体の遺伝的な特性の違いだと思われる。
園芸品は誕生した頃は、せっせと株分けされ増やされ増殖も良かったのだろうが、近年に増殖率が落ち増えにくくなったのは事実の様だ。
棚下などにこぼれ種子による実生苗が発生している事がある(そのままにしておと、通常いつのまにか枯死している)が、それを鉢上げし栽培を続けると、驚くほど早いスピードで株立ちになる。
それを見ると古い園芸品とは増え方が全く違うので、やはり品種の劣化があるのだろうか。
銘品と言われる園芸品は、いずれ絶えてしまう運命にあるのかもしれない。
今こそ銘品は銘品で作り伝えていきたいが、日本の御家芸である園芸で銘品を越えるような園芸品が、誕生してくれる事を期待したい。

話が白花から反れてしまったが、よく流通する園芸品の白花品に " 銀河 "と" 銀星殿 " がある。
今回は " 銀星殿 " と " 銀星 " を取り上げたい。


" 銀星殿 " の株分けされた次のシーズンあたりの姿で、未だ本姿ではないが他の白花品とは区別は比較的容易だ。


これは挿し木や株分け苗を栽培して数年経った頃の姿で、良く締まった株。
これを関西方面で " 雪乙女 " の名前で栽培されている事があります。
" 雪乙女 " と言う名前の個体は存在するのか私は知らないが、カタログ等で見たことがないので同品異名ではないかと思っています。


これは数年栽培した物を鉢増しした株で、本姿を現したもの。大きい葉で付け根から80mm程あります。
この頃特に隆起した線が出て来て、他の白花には無い特徴を現します。
2枚の葉幅は幅広く、葉の上部は平らに切り型でキール(縁、エッジ)は糸状に少し赤い。
裂葉は長く(切れ込みは深く)葉の全長の半分にまで及びます。
細かい斑点(点状の窓)が裂葉から下に散在し、閉園した長野県の錦園作出となっています。


次に " 銀星 " なんですが、こちらは完全に流通からは廃れてしまった園芸品で、私が知っている限りコノフィツムハンドブック(以下コノハン)の記載しか知りません。
裂葉の下に斑点があるのは " 銀星殿 " と同じですが、若干不明瞭で大きさが少し大きくまばらな傾向にあります。
また裂葉が短く(切れ込みが浅め)、大型だと言われますが、私が観察したところでは
" 銀星殿 " よりはるかに小型であり、中型の園芸品だと思います。


何処かのカタログで見た気がしますが、作出者(所)に関して私は知りません。
この " 銀星 " が、 " 銀河 " として販売、流通する事があります。
" 銀星殿 " は大型な為、他の白花品と間違われる事はないですが、" 銀星 " と" 銀河 " は大きさが似ている事から混同される事がある為と思われます。


こちらは上記の " 銀星 " より古くから家にある個体で、出所は不明です。
大型の部類に入る園芸品ですが、" 銀星殿 " 程は大型ではありません。
ずっと上記と同一のクローンなのか結論を出せないで、もう7~8年観察いています。花着きが悪く増殖率も悪く綱渡りのような栽培を続けています。
結論が何時出せるのかわかりませんが、姿は良い物なのですが、園芸品として致命傷である増殖率が低いので、やはり廃れる運命にあるのでしょう。
仮にこの個体と上記 " 銀星 " とは別のクローンだとすると、最初に出て個体名を" 銀星 " と付けた個体と、後から出た " 銀星 " によく似た白花園芸品と言う関係にある個体なのかもしれません。

2022・3・28

先日オークションサイトを見ていたら “ 銀星 ” が出品されていましたので、御報告します。
恐らくネットで見たのは私は初めてで、判る方にしか判らないと思うかたちで出品されていました。
と言うのも、名前が違って出品されていたからで、“ 大磯 ” で出ていたからです。
“ 大磯 ” と言うのはやはり白花品ですが、“ 銀星 ”とは一目で見分けがつく程違っています。
いつ頃作出された白花品なのか私は知りませんが、本物を見て納得しました。
それは斑点肌なのです。


どうでしょうか。

もう一つ話をしなくてはなりません。
非常に残念な事ではありますが、信州の幾つかあった老舗の多肉専門店のなかで、
“ 銀星 ” を “ 大磯 ” として販売していたのがあります。
何時から品違いが起きていたのか判りません。
実際に私が品違いと判断した後、悪いとは思いましたが
『“ 大磯 ”はありますか?』
と尋ねたら、
それを指して、
『これがそうです。』
『これは “ 銀星 ” ではないですか?』
と聞き返したら、
『そうかね、家では “ 大磯 ” で売ってるけどね』
と言うことでした。

話を戻すと、出品者に確認をとったところ 『“ 大磯 ” で間違いない』
との事でしたが、恐らく出品者が入手した多肉販売店は、その多肉販売店であったに違いないと思います。

老舗の多肉販売店から入手したからと言って、本物とは限らない事例の一つです。

あえて書き留めておきます。

『じゃあオリジナルクローンをどうやって求めればいいんだ!!』
っとお嘆きの貴方、
① 出来るだけ資料を集める。

昔の事で信頼できる資料を
入手するのは限りなく難しく
なっています。

② 後はひたすら観察、精査しつ
づける。

折角良い資料があっても、
観る目がなければ、宝の持ち
ぐされです。
結構こんなのが多いんですが
ね。
観察眼を養うしかありませ
んが、これが中々一筋縄では
いかない。
元来細かい違いの解るのが
日本人ですから、誰にでもこ
の眼をもてる可能性が高いは
ずです。
頑張りましょう。
本当に無理なら信頼のおける
方、所からの入手しかありま
せん。
その相手を見極めるのも結局
あなた次第です。