喜右衛門園芸

植物栽培、観察、雑学、情報発信

センペルビウム・あれこれ7 Sempervivum et cetera

今回は “ Red Oddity ” を紹介します。

丈夫でよく増える為に他の物よりよく流通しますが、正体、来歴について不明です。

色々な説がある様で、国内で作出された物や輸入による物、どちらかである事は事実ですが、

決め手に欠けるようです。

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作出された場所や発表された年号等の記述があると思うのですが、国内の記述はネットの情報よりはるかに同好誌の情報の方が多く、信頼に値する事ばかりなので、何処かに書いてあると思われます。

現在同好誌のバッグナンバーや専門店のカタログ等、資料を自由に閲覧出来る手段は皆無に近く、いささか失礼ではありますが古参の先輩方が逝ってしまわれたりしない限り他の目に触れる事は無いですね。

想像ですが、モンスト化するセンペルの Oddity の様なパイプ型の葉をもち、色付き方等からRed Oddityと呼ばれたに過ぎないと思われます。

海外ではこのモンスト化するセンペルに関して過去に紹介されている記事は見つからない為、もしかすると国内にて発生したのかもしれません。

またこのある意味安易なネーミングにも、日本人の思考が見え隠れしている気もしています。

それ程古い品種では無く少なくともアッディディよりも後に作出されたのでしょう。

もし海外で作出されたとしたら、きっと別な名前がある事と思います。

話がやや脱線していますから元に戻すと、不明ではありますが丈夫で僅かではありますが流通し、他には無い姿ですので直ぐに見分けがつきます。

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この画像は入手した小さな仔苗を植え付けから一度も植え直したりせず栽培したもので、20cm ✕ 20cm の面積にビッシリと増えた物です。

一つが 6〜7cm の親になっていて、

“ Red Oddity ” としては最大級でしょう。

中型のセンペルビウムと言ったところです。

画像は全て初夏のものですが、季節による葉色の変化も美しくワインカラーから黒に近い様な紫まで表します。

 

また何が起因しているか判りませんが、綴化の様になる事があります。

断面が丸く葉先を切った様な葉姿で、既に綴化の様に異様なのですが、下の画像の様に綴化しそうでしない様な、境目を行ったり来たりしながら増殖をします。

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稀ではありますが、普通葉の個体が出る事もあります。

脇に出た仔苗の時から レッド・アッディディの場合と普通葉の場合がありますが、今まで普通葉で出たとしても一時で、割と早くにレッド・アッディディになってしまいますので、安定した変化葉です。

 

センペルビウム・あれこれ6 Sempervivinm et cetera

今回はカザグルマを意味する “ Whiriligig ” を紹介します。

“ ワーリギッグ ” とカタカナ表記するのが近いと思いますが、出来たらそのままの英名表記をしたいですね。

作出されたのはアメリカで、Shirley Rempel 氏で1976年とされています。 

この年号は作出年では無く、公に発表された年と思いますが、まあまあ古いですね。

 

どの様な条件が作用しているのか判りませんが、この品種も様々な顔を見せてくれよく縮れます。

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画像の個体は少しだけ葉が旋回気味に縒れていますが、残念ながらこの旋回も一定の方向になるものではありません。

詳しくは葉の一枚一枚が縮れるまたは曲がる方向は様々なので、結果団子状で見た目は綴化(てっか)の様になります。

実際には綴化の様に成長点が際限無く連なったりする物とは違いますが、それにある意味近くなる事もあるのです。

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この上の画像の物はその傾向が出ていますが、未だ何となく1個体1個体が判ります。

しかし下の画像の物はどうでしょう、

もう何処が個体の芽なのか何なのか判らなくなっています。

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これら綴化的な姿になった後、一体どうなっていくのか観察を続けたいと思いますが、恐らく分けてやらないとランナーを出すこと無く膨れ上がるのみだと思われます。

一般的にこの様なものは、ザクザクと適当に切り分け発根して来るのを待つ方法で増殖させますが、消毒した刃物と切り口を十分に乾燥させないと雑菌により枯死する傾向にあります。

余談ですが、以前に “ Red Oddity monst. ” (レッド・アッディティ 綴化) として販売されているのを見かけた事があります。

“ Red Oddity ” も “ Whiriligig ” と同じ様な綴化状を示す事がありますが、葉の色合いや形状が結構違っていますので、見分けるのは容易と思われます。

 

 

 

センペルビウム・あれこれ5 Sempervivum et cetera

今回も変化葉センペルビウムで最も有名な物だと思います “ Fame montrose ”  を見ていきたいと思います。

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これぞ “ monstrose ” と言うまでの画像を探しきらなかったので、良い画像ではありませんがとてもセンペルビウムとは言い難い葉姿です。

“ monstrose ” は造語でモンスターとローズを合せたもので、モンスターは直訳なら怪物ですが、海外では異質に変化した葉姿の個体をすべて引っくるめる総称の様です。

その突然変異の葉姿が場合によって、rose バラの花姿の様になる為に名付けられた物と言われています。


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私が初めて見た時の衝撃は今でも忘れませんが、本当にバラの花の様な多肉植物と思いましたし、センペルビウムとは思いませんでした。

何時誰か作出したのか調べきれませんでしたが、唯一無二の存在である事は誰もが認める事と思います。

 

葉姿に関しては様々変化し寸が詰まり分厚くエッヂが立ってワン曲するかと思えば、先が丸く球体の様になり棍棒状の葉を出してみたり、本当に奇々怪々です。

また通常ではモンストの個体から出る仔は、モンストではなく通常葉の物が多く、少ないながらもモンストの仔も出る事が知られています。

また得られた仔はある段階まで普通葉の顔をしていますが、ある時葉から変化しだして “ monstrose ” になる事が殆どです。

そのある時とは定まっておらず、どの様なステージで起こるのかは個体次第の様です。f:id:S-kiemon:20230609123056j:image

上の画像は幅が7cm以上ある個体ですが、暫く通常の葉のままで下葉でそれが判ると思います。

しかし最近急に葉が変化しだして球体状の葉は3cm近くあります。

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稀に先祖返りもある様ですが、育てていくうちにモンスト化するのではないかと思って通常の葉を持つ個体が出てきたら切り離して観察しています。

実際海外でも群生全ての個体が “ monstrose ” が紹介されていますから、皆さんも挑戦してみては?って思います。

非常に異質な姿です。

 

2023・3・23

( 注意 ) 

Fame monstrose  →  Fantasy (正式名) です。

名前の来歴を調べてみたが、1962年イギリスの愛好家のもとで出来た品種で、その時の普通葉の品種名は判らなかったが、ドイツのサイトをはじめアメリカのサイトでこの変化葉になった物の同品異名を見る事が出来た。

Sport von " Fame " 、Fame monstrose 

このFame monstroseが国内で呼ばれることとなり、私もこの名前に馴染みがあります。

最近はこのFameのみで呼ばれているのを見かける。

その後このイギリスで作出された普通葉の品種から、変化葉である個体がアメリカで出たようで1977年に Fantasy ファンタジー命名された。

だからこの変化葉である個体は、正式名称の ファンタジーと呼ばなくてはならないが、意外と浸透しておらず時間がかかりそうです。

教えて頂いて調べる機会を頂いた方に、この場を借りて感謝申し上げます。

 

 

センペルビウム・あれこれ 4 Sempervivum et cetera

 

今回も両者は同じか否かをテーマにしてみたいと思います。

特にセンペルビウムの様な世界中で品種のが作出されていて、互いに似たものが多く品違いが必至な物については禁断なテーマに違いない。

 

“ Oddity ” と “ 百恵 ” です。

この両方の名前の指す個体は同一の物である事が判っていますので、説明は簡略的にしたいと思います。

海外で 作出され “ Oddity ” で流通しているものが国内に入り、横文字では売り難かった時代に “ 百恵 ” と名付け直されて流通した事が判っています。

“ Oddity ” = 奇妙な を意味する名前で、

国内では海外と同じスペル表記する場合と、スペルをカタカナ表記する場合があります。

“ オッディティ ” としている場合が殆どですが、

“ アッディディ” とカタカナ表記するのが正しいです。

そもそもカタカナ表記しづらい物をあえてカタカナ表記にせず、日本もそろそろ英文字表記で良いですよね。

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この “ Oddity ” =  “ 百恵 ” は原種とされていて、

tectorum の変化葉となっています。

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この画像の様に変化葉の “ Oddity ” = “ 百恵 ” を栽培していると(特に生産者など大量に増やしている)、通常の葉を持つ物が出てきたりします。

先祖返りとか戻りとか言っている現象で、

もう10年程観察していますが、一度戻ってしまうとそこからは変化葉の “ アッディディ ” が出た事は今までありません。

画像の物はホームセンターで “ 百恵 ” が販売されていた物を購入したところ、翌年普通葉が出てきたのでそのままにした物です。

その後何回かホムセンでこの様な普通葉になった物を見かけましたから、意外と先祖返りは珍しい事ではないと私は思います。

まぁ、本来先祖返りしてしまっては園芸的価値が劣ってしまいます。

“ 奇妙さ ” が売りなんでね!

 

 

センペルビウム・あれこれ 3 Sempervivum et cetera

今回は両者は同じか否かをテーマにしてみたいと思います。

特にセンペルビウムの様な世界中で品種のが作出されていて、互いに似たものが多く品違いが必至な物については禁断なテーマに違いない。

 

先ずは、“ 栄 ” と “ カルカレウム・モンスト ” を紹介したいと思います。


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“ 栄 ” です。

私はこの名で入手して以来長く栽培して来たセンペルですが、由来など全く判らない状態で今日まで来てしまいました。

また入手した時期が悪かったのか、用土が庭土で排水が悪かったのが原因か、生育が悪く最近まで増えては枯れを繰り返してきた為、何時枯れてもも仕方ながないと思ってきました。

 

他のモンストにもありがちな増え方をするもので、画像の様に仔がでるが表面からランナーが全く確認できず、極端に短い為に株が立体的に塊になります。

そのうち後から出て来た芽は、先に大きく成長した芽に押されて弾き飛ばされる様に、ポロッと塊から取れます。

その頃にはランナーは枯れていて、仔は新たに細い根を短く出しているので挿します。


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一昨年から水やりの管理を徹底した結果、ようやく仔が吹いても元の株の芽が枯れたりしなくなって、上画像の様に仔苗を作る事が出来ました。

そうなると一番気になる由来についてです。

この名前は人名であろうとは想像がつきますが、苗字?名前?何方もありえる名で迷ってしまいます。

何方か由来、来歴を御存知でしたらコメント欄にコメントしていただけたらと思います。

 

 

一方 “ カルカレウム・モンスト ” と言う物です。

以前から気にはなっていましたが、入手は最近です。

こちらも由来は判りませんが、今の所名前の通り原種calcareumとされています。


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お気づきとおもいますが、“ 栄 ” と“ カルカレウム・モンスト ” は大変良く似ていて、同一のクローンでは?って思っちゃいますね。

この様な変化葉を持つセンペルビウムは、そうは無いので、恐らく同一の物だと思います。

 

今後観察を続けてみたいと思いますが、やはり ” 栄 ” の名前の由来と来歴が気になります。


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センペルビウム・あれこれ 2 Sempervivum variegated

センペルビウムは季節でその色合いが全く異なるので、世界に広くファンが多い植物です。

しかし逆に似た物が多く存在するのも確かで、今も世界各地で新たな品種が誕生していますが、やはり似た物ばかりです。

 

似て非なりなのではありますが、どんな季節でも見分けがつかない物は、やはり品違いの原因になるものです。

今回は昨年から気になる事がありましたので、書き留めておきたいと思います。

 

まずは、サクソンとメッテニアヌム錦に就いてです。

相変わらずサクソンとメッテニアヌム錦を同一、若しくは兄弟とかで認識されている事がある様です。

サクソンとメッテニアヌム錦は全くの別な種類のセンペルビウムの斑入り品です。

その事は、斑入りセンペルビウム・あれこれ1の記事で書いていますので参考にしてもらって、実際に一番違いが明瞭な状態を見て頂こうと思います。

 

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見ての通り、春先の冬眠明けが一番判りやすいですね。

サクソンはもう本姿で5cm程にまで成長している個体で、赤い色付きが目立ちます。

メッテニアヌム錦はどう栽培してもこの様にはならず、画像の感じからもう少しピンク色がかった色合いまでです。

斑の性質は、葉の中心線付近にグリーンがあり、そこから葉の縁にかけて白色へのグラデーションになっているので同じですが、葉の質と形状(形、長さ)に違いがある為、見た目の印象は違います。

 

2022・7・12

春先から初夏にかけて変化をみて頂こうと思います。


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サクソンは春先から気温が高くなるに連れ、白っぽかった葉がグリーンが目立つ様になります。

見にくいですが、下の画像の矢印に仔が出ていますが、サクソンの仔の斑は葉縁に極僅かあるのみで、大抵はグリーン一色です。

この事もメッテニアヌム錦との違いです。

時折斑が綺麗に、またはグリーンの葉が少量しかない仔が出る場合がありますが、途中で成長が止まり上手く育たない事が多いです。


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メッテニアヌム錦は元々斑とグリーンの部分がハッキリと分かれておらず、季節によるグリーンの変化はサクソン程無い様に思います。

 

 

つづいては、ゴールドナゲットです。

私が知ったのは3年位前でしたが、早く国内に入って来ないかと待っていました。

画像は春先の色合いですが、これ程他のどの品種とも似ていない色合いの変化をするセンペルビウムも珍しいと思います。
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しかしながら気温が高い時期は比較的グリーンが強く出る為、他の品種と見間違える事が無いとは言えません。

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この通り何処にでもありそうなセンペルだと思いませんか?

本物を一度でも手にとって見た事があればその様な事もないでしょうが、見た事がないなら尚更です。

そこにつけ込んだ詐欺紛いな販売が昨年にありましたので、紹介します。

それはヤフオク、メルカリにて確認し、実際に怪しい、またはこれは違うと思いながら導入して検証しました。

幾つかの品種で検証しましたが、どれも結果は全くの別物で故意に品違いな物を販売した事が判りました。

 

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これはメルカリでゴールドナゲットとして4000円で販売された物です。

サイト内では、親の参考画像ではゴールドナゲットの画像でしたが、苗の画像では全く違う雑な画像で、季節で色合いが変わるので現在は色が出ていないと解説されていました。

その個体が上の物で、抜き苗で送られてきた為植付け直後に撮影したものです。

本来ならヤフオク、メルカリでの画像も載せたいのですが問題もあるので、、、、ブログ等では自分が撮影した画像のみを使用しないといけませんからね。


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これが現在の様子ですが、似ても似つかないものである事が判りますね。

到着した時に葉腋に仔が居ましたので様子は違いますが、販売されたそのものです。

 

因みにゴールドナゲットなど大型のセンペルビウムは、かなり成長しないと仔を出さない傾向にあります。

実際初めて知った時から現在まで株になった画像を殆ど見た事は無く、少なくとも販売する個体位で仔は着いていない。 

これも一つ特徴です。

作出元に聞いてみたところ、増殖には胴切り、芯止めなどオフセットする方法をとっているとのこと。

やはり仔は着きにくいようなので、色の出ていない時期も一つ見分けるポイントになると思います。

 

話を戻すと、

私の他にヤフオクやメルカリで購入した方は結構いますから、同じ個体が送られてきていたとしたら同様な状態なのは想像に難くないです。

この品違いの入手後に秋遅く園芸店で多数の個体が正規に販売していたので、1本購入(1000円)したのが、上の画像で左の個体です。

 

現在は正規品が販売され流通量もありますから、増える物は慌てて飛びつかない事が賢明と言う事ですね。 

少しだけ待っていれば大概の物は入手出来ますし、持っている方の棚では増えて困る程増えますから、必ず何処かのタイミングで放出されます。

だから楽しみはずっととって置きながら、日々の園芸を楽しんだら良いと思います。

 

 

早春植物の美しさ

生き物には幼少期から非常に興味があった為、昆虫から魚類、植物と遍歴はあるものの、気が多くその時の自分の興味に任せて、様々なものに目を向けて来ました。

植物では圧倒的に春に花期を迎える物が多く、所謂早春植物と言われる物は可愛らしく、皆好きな物だと思います。

福寿草、節分草、雪割草、桜草等など、良いですね。

良いと言っても、自分が栽培するのかしないのかは別な話で、それぞれ色々な特徴がある為で、無理な物に手を出し続けても楽しくないし、精神衛生上も良くない。

無理な物は画像で楽しみましょう!

特徴、つまりは自分がその植物の生育環境(年間の光量の調節、肥料、水やりのタイミング等)

を再現、若しくはその植物がのびのび気持ち良く生育出来る環境を最大限作る事が出来るかにかかっています。

時にこの事を “ 栽培のクセ、単にクセとも ” 言いますが、クセと言うけど植物にクセがある訳ではありません。

その逆で栽培者にあるクセを指すことに気付いて欲しいのです。

私を例に出しますと、

私は放任栽培が基本になっています。

仕事で不在がちな為、キメ細やかな管理が出来ないので水枯れや日焼けなどでの失敗は数知れず、どれだけの良い植物を犠牲にしてきたことか。

思い返すと寝込んでしまいそうな程で、精神衛生上良くないので今では無かった事にしています。

ですから水遣りや管理をあまりせずに何とかなる植物(そういう物はあまりない)を、色々な失敗をしながら探して来た訳です。

まぁキメ細やかな管理が出来れば、栽培出来ない植物など無いと私は思うのですが(何方にでも出来ます)、元来気が多い人間は熱中するのも早ければ飽きるのも早いので、どんなに好きで格好良くても可愛くても、余程何とかならないと嫌気が差して栽培する意欲がなくなります。

無くならない貴方は大したもの、諦めの悪い方です。

 

いつもの事で前置きが長くなりましたが、ここから早春植物を一つ紹介。

かなり昔からPulsatiila属が好きで、国内、海外問わず様々なオキナグサを見ました。

中には栽培しづらい物もありましたが、大抵は花を見るまでは頑張って栽培しました。

世界のオキナグサ属は40種ほど、同種異名、変異を差し引きしても50から60程(大げさかな?)

あるのではないかと思いますが、どれも美しい姿で世界中にファンが多い植物です。

その中でも暖地で庭植えに出来るもので、長く栽培できる物はそう多くはありません。

やはり非常に古い歴史のある植物群で、暖地には元より自生が無く温帯から北でユーラシア大陸に多くの種が自生しています。

日本も温帯のはずですが、栽培となると最早高地か北の大地以外は暖地ですね。

最新の学者による解析では中央アジアを起源に持つ様ですが、20数年前に机上で画像や自身で栽培した感じでのグループ分けをしたのですが(外観、草姿、花等)、その解析結果に類似していたのには驚いたのと共にヤッパリなと言う感想を持ちました。(またいらない余談でした。)

 

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水やりだけで何とかなる種類にウルガリス種がありますが、その種とよく似た物にハレリ種があります。

正直両者を分ける必要性が解らないのですが、解析では両者はよく似てはいるが、種が派生した系統が少し違うようです。

見た目には花期に花茎が直立し苞葉(襟巻の様な所)から萼(花弁の様に見える所、オキナグサ属には花弁は無い)が通常あまり曲がらず、花は直上になる傾向があります。

また時にハレリの亜種にされる事やウルガリスの亜種にされる事のあるグランディスではそれが顕著です。

ランディスの植物体は柔らかく葉質は薄く、ウルガリスは硬く葉質は厚い、ハレリは両者の中間的な感じです。

花色は上記の画像から下の画像まで幅広く、時に白花もあります。

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やはり花が咲く時はワクワク感がたまらないし、どんな植物でも芽出しはとても良い時期です。
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稀にかなり青味がある花を持つ物が生まれますが、これらを育種したナーセリー由来と言われる株や、他の由来を持つ物等の種子による累代繁殖をしても、中々良い特殊な青味のある花を持つ個体は得られないようです。

画像の物も良い色ではありますが、欧州にある目の覚めるようなブルーには程遠いものです。

 

2024・2・18

 

今シーズンは寒いながらそこに暖かい日があったので、早春植物は花または芽出しが早く私が経験した中でも初めてではなかろうか。

この様に早いと気温が低いので色が良い。

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通常は3月上旬から下旬頃の気温はかなり高く赤の色素を持っている為、青さは感じるものの赤味のある花色の物です。

稀にこの様な花色を持つ物がありまはすが、とても稀です。

元親は20年近く前にスロベニア標高500m産の種子より実生したもので、グランディスの名で入手しました。

未だ親株は現在で毎年花を咲かせていますが通常の花色で、そこから種子を採って数年前に実生した物の一つです。

暖地での栽培では余程樹勢が無いと種子を採取すると、株が疲れて枯死するリスクが高くなります。

なので株を充実させ多花を目指すなら、開花後ある程度で花茎をカットした方が無難だし実生をしないなら尚更です。

長くそうして来ましたが、数年前に思い切って種子を着けてみた訳です。

どちらかと言えば亜高山帯の植物ですが、すっかり一年中日当たりで暑い夏も乗り切っていますから、馴化に成功したと思います。

初花でまた来季通常に咲いてもこの花色ならよいなぁって願いを込めて、また記録に残す意味で載せました。

 

アリオカルプス・連山

アリオカルプス、

面白いサボテンがあった物だと、興味を持ったのはつい最近の事です。

花サボテン程巨大では無いが、開花した時は美しいものです。

種としては決して多くないが、地域変異、個体群などで分けられているので、コレクションされている方は多くを集め栽培している。

その反面過去には大量に盗掘された山採り品が世界中にバラまかれた歴史があり、現在それ等の個体が一体何の位現存するのかを考えると、私を含め植物栽培と言う行為は悪行と言うに他ならない。

現在も現地民、ブローカー、小売業者、ユーザーと一連の流れが確立して、合法だと言いながら山採り品が業者の棚やユーザーの棚に鎮座し、出版社が特集を組んでそれらを助長する様な書籍を出版しているのは、果たして平常、正常な趣味と言えるのだろうか。

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これを手にしてから3年、入手時の画像と見比べると高さは一緒ないし低くなったが、外周は1cm程大きくなった。

毎年ブーケの様な豪華な花を咲かせてくれるし、花の無い時もこの整った姿が気に入っている。

やはりこの個体も例にもれず古い輸入品と聞いたが、山木山採り品であろう。

前の持ち主は業者の様な感じであったが、本来の持ち主(長年の栽培者ではない)ではなさそうだった。

栽培者は何らかの理由により、この株を手放さなくてはならない事情があったのだろうと、想像する。 

一体何十年生なのか気になるところだが、この先も長生きして欲しいものです。

私が最期まで手元に置くつもりの植物の中でも筆頭になる事と思うが、その後を何方かに引き継いてもらう事が出来たら、この個体が遥々故郷から無理やり連れて来られた事に対して、私は懺悔の念から少しだけ開放されるでしょう。

 

話が変な方向に行ってるので、修正します。

 

他ではあまり見ない小さな葉の形をした部分は、分厚く鎧のように硬く重なり見事です。

葉の様な形〜

としたのは、実際サボテン類は一般に葉っぱ(葉身と葉柄からなる)的なものは持たないか棘に変化し、球体状な部分は茎が変化した物と言われている。

だがアリオカルプスでは、棘があるはずの場所に棘座と言われる綿毛状の物があり、その棘座の周りがあたかも葉の様な形状をしている。

これを何と表現したら良いか先人達は考えてイボ(疣)と呼んだが、広くサボテンとひとくくりにした植物の見た目の凸凹の凸は、現在も疣と呼ばれている。

その疣が葉の様な形をしているアリオカルプスは、何とも変わった一群で世界で人気がある。

 

最初に戻るが、なので世界中から採集者が探索、採集された為に現在は絶滅に瀕していると聞く。

最早野生の個体を見ることは極めて難しくなっている様です。

成長は御世辞にも早いとは言えないが、実生も盛んに行われている。

残念なことではあるが、ガーデンシードは交雑した種子が多く、それ等の種子から得られた個体は時に交雑したとは思えないほど、本来の得るはずだった種類と見分けが付かないものもある。

遺伝子汚染が深刻になっている品種もあるようで、 某オークションサイトでも結構よく目にしますので深刻です。

特に純粋な種をコレクションしている者にとっては許せない事で、こういう事からも山木の需要が未だに絶えない理由の一つにもなっていると聞く。

私もこの連山から毎年種子をせっせと採種し欲しい方に配ったり自分でも蒔いているが、なかなか手強いもので成長が遅い。

よく発芽して弱いわけではないが、只々成長が遅い。

ただ蒔きっぱなしはダメの様で、発芽して一年後には小さいながら移植すると、グンと成長する様です。

だからと言って3年で開花なんて夢でしょうけど。

 

心の声〜

自分が若いうちでないと実生をしてはいけないかもしれない。

自分亡き後の未来人達へのプレゼントとして、喜ばれる様な良型の物を探す為の実生をするなら、実生をするのも良いと思いますね、例え途中でやめる事になったとしても。

 

アガベ・5 ” 氷山 ”

古くは龍舌蘭、リュウゼツランとして国内の広い庭等に植えられて、年月を重ねて開花したりするとニュースになったりしました。

その頃はもっぱらアメリカーナ種が中心で、斑入り種等時折見かける程度でしたが、最近は様々な種類を庭木として植栽したり空いた畑地に植えたりして楽しむ方が増えたように思います。

鉢植え栽培では、これもまた様々な種類が海外から導入され新しい品種が発表されたりも重なり品種も豊富になっています。
一方昔からある品種に関しては、新しい品種に比べ園芸的に少し劣る物は栽培個体数を減らす傾向にあり、逆に先人のコレクションで元々栽培個体数の少ない品種等は増やされ目にする機会も増えました。
言い換えれば、それだけ大家と呼ばれた狂気に満ちた先人方(尊敬を込めて)が鬼籍に入ってしまわれたか、栽培が出来る環境に無いかと思います。

見たことが無いものが見れたり入手出来たりするのは嬉しい事ではあるが、その様な大家に出逢う事が出来なくなるのは寂しい限りです。
せめて栽培植物を通して、由来や来歴に触れ先人方に想いを馳せてみては?
きっと植物栽培、観賞と同じ又はそれ以上に人間を豊かにしてくれるはず、と私は思います。

前置きが長くなりましたが、
アガベの中でも丈夫で観賞的バランスに優れている ” 氷山 ” こと
Agave victriae - reginae ” White rhino
です。
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自然に外れる様になるまで親品につけておいたのですが、親品の育ちが緩慢の様なので植え替えにあわせて外しました。

入手してから7年、当時は画像の一番右位で5千円で購入。
それが育ってこれら腋芽を出す様な大きさに成長しました。
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かなり炙って締めて栽培していますので葉の枚数が少ないですが、丈夫で美しくシャープな ” 氷山 ” は栽培個体数も増えて、入手が容易になったのは嬉しい事です。
入手が容易になったとは言え、かつてより安価になってはいますが、高価なのには変わり無くもう少し安く入手出来ても良いと思っています。

栽培に関しては、アガベに限らず鉢栽培は水はけが重要になります。
細かい用土より粗めの用土の方が根張りは良いですね。
因みに購入して植え付けてから植え替えるまで、庭土にピート、山砂、燻炭、赤玉を水はけの具合をテストしながら混ぜ合わせて使っていました。

でもこれで凄く成長が良かったのかって言われたら、? ですね。

思うにやっぱりアガベには水はけに重点をおいた方が良いと思います。
肥料は元肥より置肥の方が良いでしょう。

これは違うな・1 Sedum hakonense マツノハマンネングサ

この新しいお題の ” それは違うな ” はシリーズで時折私が目撃した間違いを指摘するものです。

人から憎まれたりしそうな事ばかり書いているのですが、それ程間違った情報やそれに附随した物が出回っている状況なんだ!

って私は言いたいのです。

だから書きます。

 

今回はかなり昔からの間違いです。

 

マツノハマンネングサ、

Sedum hakonense 。

固有種で分布が限られているのと、生活環境が限定されているので、決して安定しているとは言い難く現在では不安定要素の方が強いイメージです。

植物自体の詳しい事や画像は検索していただけたら判りますので、割愛します。

割愛しますが、今回も長文書きます。

 

分布域は北から秩父奥多摩、上野原、丹沢、南足柄、箱根、伊豆。

富士山をぐるっと周り込む様に富士宮から山梨県甲州と天然ブナ林が残っている場所に点在しているとある。

かつてはもう少し広い範囲に点在していたと思われますが、複合的要因により局所的に残ったと考えられます。

また点在している産地毎に変異があるのですが、マクロでは個体差もあるしワイドで見れば変異もあります。

葉の形状、長さや幅、花では裂けて花粉が吹いてくる前の包は朱赤~黄色まであります。

 

分布を広げてゆくには何の動物が関与したのか?

大概は動物が関与しているのですが、どうだろうか。

 

いや、国土が自然林だったころ分布を広げていったのだろうが、その自然林が植林活動等によって分断消滅した為、現在の産地だけが残ったと言ったほうが良いかもしれません。

種子はかなり微細な事、かなり高所にも生育している事も考慮すれば、自然現象つまり風、嵐の様な強風が分布を広げる為に関与し自然林を移動していったのではないか、

飛躍しすぎな考察かな。

 

現在の状況から未来を考察すれば、

非常に危な気なブナを含んだ自然林の自生地の遷移が進行するならば、それに伴いまたはそれより早く自生地毎の個体群が進化を遂げていくと思われます。

分断された自生地毎の遺伝的交流が無い個体群の運命は明るいとは言えない。

分布の拡大には自然林が不可欠だと考えると、それが現在ない将来に復活していくとは考えにくいともなれば、個体群が独自の変化を生じる可能性もあるのでは?

それとも逆で自然遷移と共に絶滅していってしまうのか?

この先の未来には人間活動の影響を受けない自然遷移はあり得ないですが、この生命に幸あれと思うのです。

 

生活環境は天然ブナ林(ブナそのものとは限らない)で苔むした大木、苔の堆積物やそこに溜まった物に茎を倒して節から根を浅く張っている。

倒した茎は根茎の様な役割をしていて、古くなると苔に埋没していて、そこから新たな芽が成長するがその茎は結構長く苔に守られながら残る様です。

 

さてここからが本題です。

以前からではありますが、国内でこの和名マツノハマンネングサは正式な和名と流通名(通称名とも言う)があります。

正式な和名とは言うまでもなく、Sedum hakonense に対応するものですが、流通名(通称)のマツノハマンネングサは園芸品の

Sedum polytrichoides  ” Chocolate Ball ” 

です。

良く見かける園芸品  (正確には原種より実生選別品の  ” チョコボール ” )ですが、

誰がこの海外種をマツノハマンネングサと呼んだのか?

 

酷いとSedum hakonense ” Chocolate Ball ”

なんてラテン語を並べて、希少性や更にその選別した物で分布が限られている、なんて説明があったりします。

デタラメにも程がある。

各社販売サイト、業者の販売サイトなども同様に見てみたらビックリを通り越して呆れてしまう。

 

皆さんも恐らく気が付いているはず!

と思いながら、あえて文章にして何方か一人でもこの記事を読んで理解、誤った認識を正していただけたら幸いです。